tokyo.sora

2002/07/01 アミューズピクチャーズ試写室
東京で暮らす20代の女性6人を主人公にしたドラマ。
CMディレクター石川寛の監督デビュー作。by K. Hattori

 CMディレクターの石川寛が、東京に暮らす6人の20代女性を主人公にして撮った映画監督としてのデビュー作。主人公は6人だが、群像ドラマではない。6人の主人公たちは東京の空の下別々に暮らし、直接間接にそれぞれが小さな接点を持つものの、互いの人生には深く関わることなく生きている。この映画は6人の主人公それぞれの生活を、時にはリレー形式に、時にはパラレルに描いていく。映画の持ち味としては、ロドリゴ・ガルシア監督の『彼女を見ればわかること』を日本に移植して、キャラクターごとに章分けされたオムニバス形式から、グランドホテル形式に作り替えたような感じ。

 6人の主人公を演じているのは、『アベックモンマリ』の板谷由夏、『フィラメント』『ドッグスター』の売れ子・井川遥、『自殺サークル』に出演していたという仲村綾乃、バンド「Jungle Smile」でボーカルと作詞を担当している高木郁乃、モデル出身の台湾人・孫正華、ドラマやCMに引っ張りだこの本上まなみ。新進女優もいれば、アイドルもいれば、歌手もいれば、モデルもいるという顔ぶれだけれど、共通して言えるのは彼女たちが全員「女優としてはまだ未知数の人たち」だということ。まだ何の色にも染まっていない、素材のままの生成りの魅力で勝負できる人たちばかりなのだ。キャラクターをあまり作り込まず、ただ画面の中にポンと放り込んで勝負する。役名さえないようなキャラクターを“演じる”のではなく、生成りの女優たちがもともと持っている肌触りのようなものだけでキャラクターを“感じさせる”のがこの映画なのだ。(ただし本上まなみ演じるティッシュ配りの女性は、作り物めいたよそよそしさが感じられた。あの髪型にあのメガネは、いかにも作りすぎだ。)

 この映画が描いているのは、6人の女性がそれぞれ抱えている孤独や悲しさや人恋しさといった感情。映画前半では日常の淡々とした流れの中で、主人公たちそれぞれの孤独を浮き彫りにしていく。その孤独は死にたくなるほどの絶望に至る深刻なものもあれば、「内緒で胸にパットを入れているのを彼氏に知られたらどうしよう」というごく些細な(それでいて本人にとっては重大な)秘密まで千差万別だ。6人の主人公たちの生活が映画の中でほとんど交わらないという構成も、彼女たちの孤独感を際だたせていく。吐く息が白く凝結する風景や、映画全体を覆う青みがかったトーンもそれを強めていく。映画は最後にこうした孤独を打ち破るヒロインたちの行動を描いているけれど、それによって映画全体の印象ががらりと変わるわけではない。ただしこうしたエンディングによって、何かしらの「救い」を観客が感じるのは確かだろう。

 映画は2時間7分あるが、これは物語の構成次第で1時間50分ぐらいにまで圧縮できるはず。ただしこのルーズな構成は、この映画の「味」にもなっている。

2002年夏公開予定 シネセゾン渋谷
配給:日活、東京テアトル 宣伝:日活
(2001年|2時間7分|日本)

ホームページ:http://www.tokyo-sora.jp/

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