釣りバカ日誌13
ハマちゃん危機一髪!

2002/07/11 松竹試写室
ゲストの丹波哲郎が他の出演者を全員食ってしまう以前に、
脚本が悪くて面白さも半減だと思う。by K. Hattori

 スペシャルや番外編を含めるとシリーズ15作目にあたる本作は、演出が本木克英監督になってからは3本目の映画になる。脚本はいつもの通り山田洋次と浅間義隆の共作だ。鈴木建設が受注した美術館建設に、発注者である富山の薬問屋会長が無理な注文を押しつけてくるというのが物語の発端。「この通りの建物を造れ」と会長が寄こした自筆の醜悪なデザイン画に、鈴建設計部の担当者・桐山桂は憤慨してしまう。桂は注文を取ってきた営業三課の浜崎伝助と共に、富山の会長のもとに直談判に乗り込む。気むずかしいことで有名な会長は、桂の度胸と提出されたデザイン画のセンスのよさ、立て板に水のプレゼンテーション能力に惚れ込んでしまう。「あの娘をぜひともワシの息子の嫁に欲しい! それが契約の条件だ!」と、会長は伝助にさらに厄介な問題を押しつけてくる。伝助はうっかりそれに「はい」と返事をしてしまい……。

 いつも一定水準の面白さをキープしているこのシリーズだが、僕は正直言って今回の映画に失望してしまった。失望の大きな要因は脚本にある。浜崎伝助ともあろう者が、大口の契約を失うのが惜しくて女性社員の結婚の口利きをするなんてことがあり得るのか? もちろんこのシリーズの一方の柱はハマちゃん&スーさんの名コンビであり、もう一方の大きな柱が社内や旅先で知り合う若い男女の縁結びであることは間違いない。でもそうした縁結びは、ハマちゃんやスーさんが「これなら大丈夫」と見込んだ男女のキューピット役を演じるのであって、顔も名前も素行も性格も知らない相手に、商売のために同僚の女性を押しつけるなんてことは断じてあってはならないだろう。鈴木社長はこれに激怒したけれど、それ以前にこのシリーズのファンならハマちゃんの行動に怒り、失望し、裏切られたと感じたはずだ。

 相手が取引先であれ政財界の大物であれ、仕事と私生活とをきちんと分けて付き合うのがハマちゃんの美点ではないか。だからこそ鈴木社長との関係だって「ハマちゃん」「スーさん」でいられるのだ。それなのに今回のハマちゃんは、仕事を失いたくない、あるいは自分の命が惜しいというけちくさい理由で、発注者である会長の非常識な注文を受けてしまう。このあたりは脚本段階で、もっときちんと詰めておいてほしかった。ハマちゃんは相手の言うことがまるで冗談だと思っていたのに、番頭が上京してきたことで本気だったと知って大慌てするとか……。なにかそうした芸当がないと困るよ。

 鈴木社長はたいそうリベラルな人のように見えるのだが、鈴建内部の女性蔑視体質、セクハラ体質は目を覆いたくなるほだ。役員会でも「女って奴は」という話で盛り上がる、佐々木課長は部下の女性に胃薬を飲む水をくんでこさせて当たり前だと思っている、ハマちゃんは出張先で女性の目の前で着替えを始める。逆に言えば、鈴建は男性にとって天国なのかもなぁ。

2002年8月10日公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:松竹
(2002年|1時間49分|日本)

ホームページ:http://www.tsuribaka-movie.jp/

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原作:釣りバカ日誌
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