PLAY BALL
プレイボール

2002/07/17 メディアボックス試写室
ガレッジセール・ゴリがフィリピンで少年に野球を教える。
タレントの個性でそこそこ観られる映画になっている。by K. Hattori

 テレビ番組の演出家、マッコイ斉藤の映画監督デビュー作。主演はガレッジセール・ゴリ。日本で事件を起こしてフィリピンに逃げた男が、怪しげな日本人たちや、現地の女性たちとの間でいろいろな事件を起こすというコメディ映画。たぶんコメディだと思う。違うのかな? 僕はあまり笑えなかったので、ひょっとすると感動のヒューマン・ドラマを、なぜかコメディと勘違いしていたのかもしれない。フィリピンと日本人と言うと、最近では『天国から来た男たち』を思い出すんだけど、少し前に『緊急呼出し/エマージェンシー・コール』という映画もあったしなぁ……。

 なんだか奇妙なお話です。フィリピンに逃げていた男がスラムでひとりキャッチボールをしている少年を見つけ、彼に野球を教えようとする。だがいつもつるんでいる相棒の日本人は「野球は道具に金がかかるからフィリピンじゃ無理だ」という。それでも主人公はこの少年に野球を教えたいのは、彼自身がかつて高校野球の選手だったという過去を持っているからだ。やがてこの少年が、主人公の憧れているクラブホステスの弟だということがわかり、主人公はますます少年への野球コーチに精を出すようになる。まぁこの間に、やくざの話だの、相棒の結婚の話だの、嫌味な日本人サラリーマンの話だの、ジープニーの盗難など、いろいろな事件が起きていく。

 もとよりこの映画がリアリズム指向でないことは明らかなのだから、最初からウソをウソとして押し通してしまえばいいのに、妙にあちこちで社会派ぶってみせたり、フィリピンと日本の現実を切り取って見せようとする意欲を出したりするから映画がぎくしゃくしてしまう。例えば「貧乏人に野球は無理」という理屈は、じつのところまったく理屈になっていない。だったら戦後の日本で少年たちが野球に夢中になったのはなぜなの? キューバじゃ野球が国技だけど、キューバはそれほど豊かな国ですか? 国の豊かさと野球はまったく無関係だろう。また映画の中には日本人とフィリピン人との混血、いわゆる「ジャピーノ」の問題が取り上げられたりしているけれど、こうした生々しい話はウソでも明るく描かないと映画の足を引っ張るよ。一番頭を抱えてしまったのは、主人公たちがジープニーで数人を轢いて大けがさせているはずなのに、そのまま何のおとがめもなしに戻ってくるところ。なんでなんで?

 話が面白くなくても、いくつかのシークエンスさえ面白ければ映画はそれなりに成り立つものだ。でもこの映画では話が面白そうな方向に転がりだしても、その勢いがまったく持続しない。話がグラリと動いても、そこからゴロリと転がることはない。いつまでもグラリで止まってしまう。出演者やスタッフのスケジュールや撮影環境など、いろいろな制約があったであろうことはわかる。でもせめてもう少しは、なんとかする余地もあったと思うんだけど。

2002年8月3日公開予定 新宿トーア
配給:アースライズ 宣伝・問い合せ:スキップ
(2002年|1時間45分|日本)

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