クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア

2002/07/23 ワーナー試写室
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイアの続編は主演が別俳優に交代。
主役クラスの俳優たちが小粒で映画は低調。by K. Hattori

 《ヴァンパイア・クロニクルズ》と呼ばれるアン・ライス原作のヴァンパイア小説シリーズから、第2作「ヴァンパイア・レスタト」と第3作「呪われし者の女王」を原作に映画化したホラー・ファンタジー。第1作目の「夜明けのヴァンパイア」は、'94年にトム・クルーズとブラッド・ピット主演の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』という映画になっている。今回の映画では主人公レスタト役がスチュアート・タウンゼントに替わり、監督もニール・ジョーダンから『エンジェル・ベイビー』のマイケル・ライマーにバトンタッチ。前作が文芸調のゴシックホラーだとすると、今回はゴシックホラーの世界観を借りたアクション映画と言い切れるほど中身も変質している。

 100年の眠りから覚め、ロックスターとして世界中を魅了するようになったレスタトは、その挑発的な言動から他のヴァンパイアたちの不興を買うことになる。ヴァンパイアは世間に背を向け、ひっそりと生きるのが掟なのだ。レスタトの行動はそれに反している。だがレスタトの歌声は今を生きるヴァンパイアを挑発するだけでなく、すべてのヴァンパイアの源流、ヴァンパイアの伝説の女王アカーシャを5千年前に眠りから呼び覚ましてしまう……。

 前作『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』ではひとりの男の視点から一人称でヴァンパイアの物語が語られる構成だったが、今回はヴァンパイア一族の起源から現代、そして未来へと継続していくスケールの大きなドラマになっている。ただしこうしたスケールの大きなドラマの中では、前作であれほど巨大なカリスマ性を持っていたレスタトも相対的な存在として描かれることになり、ずいぶんと小粒なヴァンパイアになってしまった。映画の予告編や宣伝用のポスターなどでは、ヴァンパイアの女王アカーシャを演じたアリーヤが大きく扱われているが、映画の中では後半に少しだけ登場するだけ。ドラマの中心はレスタトと他のヴァンパイアの確執と、そこにからんでいく人間の女性ジェシーの存在だ。映画を最後まで観れば、主人公がレスタトとジェシーであったことがわかるだろう。だがそれにしては、演じているスチュアート・タウンゼントとマーガリート・モローは小粒すぎる。レナ・オリンやヴァンサン・ペレーズといった中堅の俳優が画面に登場するだけで、主人公ふたりの存在感など映画の中から消し飛んでしまうのだ。
 
 アリーヤはこの映画の撮影後、飛行機事故のため22歳の若さで亡くなってしまった。今回の映画は彼女の遺作。全体に低調な映画の中で、彼女の登場シーンだけは画面が引き締まって見えるのは、彼女の持つアーティストとしての存在感のためか、それとも「これが彼女の遺作だ」という思いこみのためか。コンサート会場に突然彼女が現れるシーンは、美空ひばりの不死鳥コンサートを連想してしまいました。

(原題:Queen of the Damned)

2002年9月公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:ワーナーブラザース映画 宣伝:ドラゴン・キッカー
(2002年|1時間42分|アメリカ)

ホームページ:http://www.queenofthevampire.jp/

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サントラCD:クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア
原作:ヴァンパイア・レスタト(アン・ライス)
原作:呪われし者の女王(アン・ライス)
関連書籍:アン・ライス
前作DVD:インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
関連リンク:アリーヤ

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