モンテ・クリスト伯

2002/07/23 ワーナー試写室
アレクサンドル・デュマの同名小説をジム・カヴィーゼル主演で映画化。
瞳の中にいつも悲しみをたたえた新しいダンテス像。by K. Hattori

 アレクサンドル・デュマの同名小説をハリウッドで映画化した、血沸き肉躍る冒険活劇映画。若く優秀な船乗りだったエドモン・ダンテスは、船主からその腕と人柄を見込まれて船長に昇格。恋人メルセデスとの結婚も決まって、まさに幸せ一杯だった。だがそんな彼を妬んだ友人モンデーゴと同僚ダングラールらの密告で、彼は国家への反逆者としてイフ島へと島流しにされてしまう。それから十数年。島からの脱出に成功したダンテスが知ったのは、父の無念の死、大恩ある船主の破産、自分を陥れた連中が成功していることだった。しかもかつての恋人メルセデスは、なんと裏切り者のモンデーゴと結婚しているという。獄中で知り合った神父から大金を託さたダンテスは、大富豪モンテ・クリスト伯爵として自分を陥れた男たちに近づいていく……。

 主人公エドモン・ダンテスを演じるのはジム・カヴィーゼル。彼を裏切るフェルナン・モンデーゴにガイ・ピアース。恋人メルセデスを演じるには映画『ロック・スター』に出演していたというダグマーラ・ドミンスク。ダンテスが獄中で出会うファリア神父にリチャード・ハリス。ダンテスの忠実な部下やヤコボをルイス・ガスマンが演じ、陰謀の一味ヴィルフォール判事をジェームズ・フレインが演じている。監督はケヴィン・コスナーと『ファンダンゴ』『ロビン・フッド』『モアイの謎』『ウォーターワールド』などでコンビを組んだケヴィン・レイノルズ。この監督なのであまり大きな期待をすることなく映画を見始めたのだが、冒頭のエルバ島でのサスペンス、故郷マルセイユに帰還したときの高揚感など、物語の導入部から一気にストーリーに引き込まれた。

 原作「モンテ・クリスト伯(厳窟王)」の見どころは、主人公ダンテスが裏切り者たちに仕掛ける用意周到な罠にあり、そのために彼は伯爵以外にもいろいろな人物に変装したりする。ところがこの映画では肝心の復讐劇をあっさりと処理し、復讐をしてもなお癒されることのない主人公の心に物語の焦点を向けている。この映画に登場するダンテスは、復讐に凝り固まり、それだけを生きる目的にした偏執狂的人物ではない。彼は自分が生きるために「復讐」を方便にした気の毒な男なのだ。薄暗い牢獄の中で彼が生き延びられたのは、いつの日か脱走して自分を今の苦しみに落とした男たちに復讐したいという思いだった。脱走に成功したダンテスは、自分にとってもっとも輝かしい十数年の年月が不当に奪われた事実と向き合い、その「埋め合わせ」を求めて復讐へと向かう。彼がもっとも求めたのは奪われた「愛」の代償だ。

 主演のジム・カヴィーゼルは、『オーロラの彼方へ』『ペイ・フォワード』『エンジェル・アイズ』などの映画で、過去に心に負った大きな傷に押しつぶされそうになっている男を演じていた。今回の『モンテ・クリスト伯』もその系統。まさに彼向けの役だった。

(原題:The Count of Monte Cristo)

2002年秋公開予定 スカラ座2
配給:東宝東和
(2002年|2時間11分|アメリカ)

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原作:モンテ・クリスト伯(アレクサンドル・デュマ)
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