ウインドトーカーズ

2002/07/29 FOX試写室
第二次大戦中の暗号秘話をもとにした戦争アクション映画。
脚本の構成にメリハリがないのは残念。by K. Hattori

 第二次大戦中、アメリカ軍がナバホ語を利用した暗号を作成し、ついにそれが解読されなかったという実話をもとにした戦争アクション巨編。監督はジョン・ウー。主演は『フェイス/オフ』でウー監督と組んでいるニコラス・ケイジと、『スモーク・シグナルズ』のネイティブアメリカン俳優アダム・ビーチ。9・11テロで戦争映画の公開が手控えられた時に公開が延期された作品だが、今回ようやく日本でも公開される運びとなった。

 戦闘シーンの描写は『プライベート・ライアン』と『パール・ハーバー』のいいとこ取りをしている感じだ。兵士同士がぶつかり合う白兵戦の描写では地面すれすれにカメラを下ろして兵士の視点で戦場を描き、砲撃や爆撃のシーンでは空撮など高いアングルのカメラで戦場を大パノラマとして描き出す。ただし舞台となったガダルカナルやサイパンはあまりにも戦闘が激しすぎて、ジョン・ウー監督が「ここ一番」で見せる、けれん味たっぷりの爆発シーンや銃撃シーンを披露する機会はまったくなかった。銃撃にも爆発にも緩急が存在せず、年がら年中何かが爆発したり誰かが銃をぶっ放しているのだから、緩急の付けようがない。ウー監督の華麗なアクション演出は、こうなると形無しだ。

 物語は主人公エンダーズとナバホ人兵士ヤージーの関係性が軸になり、部隊内にあるネイティブアメリカン兵士に対する偏見と差別、エンダーズに与えられた任務と友情の葛藤、過去の戦闘で負った心の傷の克服、兵士同士の友情と別れなどのエピソードがからんでいく。こうした「男の世界」はウー監督お得意のはずだが、今回はどうも精彩がない。これはどう考えても、脚本の完成度が低いせいだと思う。ガダルカナルの戦闘をプロローグにして、映画の主要な部隊は日米が激戦を繰り広げたサイパン島に移る。サイパン上陸から困難を極めた進軍、そして最後の激闘。こうしたサイパン進攻作戦と主人公たちの人間関係の変化が、映画の中でシンクロしていくという構成だ。

 サイパンは激戦の地だったから、映画の中にふんだんに戦闘シーンが盛り込まれているのは理解できる。しかし戦闘を中心とするエピソード群の処理が、この映画ではどうもうまくいっていない。エピソードがきれいな丸い団子になって串に刺さっているのではなく、半ば五平餅のように串の回りにまとわりつき、エピソードごとのメリハリがまったくないのだ。串団子と五平餅ではまったく形が異なるのに、この映画はどっちつかずになっている。エピソードが切れると思うと切れないでつながる。エピソードがつながると思うと突然切れる。

 脚本は『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』のジョン・ライスとジョー・バッターだが、この脚本はもう1,2度根本からリライトすべきだったと思う。映画の素材としてはジョン・ウー向きなのに、観客をたっぷりと男泣きさせる場面が作れなかったのは残念。

(原題:WINDTALKERS)

2002年8月24日公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:20世紀フォックス
(2001年|2時間14分|アメリカ)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/windtalkers/

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