ラスト・プレゼント

2002/08/14 東宝第1試写室
『春の日は過ぎゆく』のイ・ヨンエが主演の難病メロドラマ。
狙いは悪くないと思うのだが根本的な疑問も残る。by K. Hattori

 『JSA』のイ・ヨンエが『春の日は過ぎゆく』の前に出演したメロドラマ。共演は『情事 an affair』『イルマーレ』『Interview』『純愛譜』など多くの作品が日本で公開されている、二枚目スターのイ・ジョンジェ。監督は新人のオ・ギファン。音楽は日本でも人気のあるシークレット・ガーデン。韓国では昨年春に公開されてヒットした作品だという。

 コメディアンのヨンギは妻ジョンヨンとふたり暮らし。2年前に生まれたばかりの子供を亡くしてからしばらく仕事が手に付かない状態だったが、最近再び相棒のチョルスと組んで仕事を始めたところだ。だが来る仕事はバラエティ番組の前座やその他大勢のちょい役ばかり。ヨンギの才能は誰もが認めるところだが、才能だけでは誰も使ってくれないのが芸能界だ。そんな夫を、ジョンヨンは手厳しく責め立てる。夫婦ふたりの生活は、今や彼女が経営する子供用品店の売り上げで辛うじて支えられている状態なのだ。ところがあるきっかけから、ヨンギは妻のジョンヨンが不治の難病で余命幾ばくもないことを知る。病気のことをおくびにも出さない妻は、自分の病気が夫の明るい芸に暗い影を落とすことを懸念していたのだ。そんな妻の自分への思いやりを知ったヨンギは、妻の病気を知ったあともわざと知らぬ顔を続ける。やがて彼の前に「お笑い王」というオーディション番組に出場するチャンスが訪れた。ヨンギ&チョルスのコンビはライバルを蹴落として快調に勝ち進んでいくが、その間にもジョンヨンの病状はますます悪化していくのだった……。

 この映画は異質な要素を物語の中で衝突させ、そこから観客の感動を引き出そうとしている。それは外見と内面の大きな違いとして描かれる。一見すると冷え切った関係に見える夫婦だが、じつは互いに相手を深く愛している。軽佻浮薄に見えるお笑い芸人が、子供の死や死期の迫った妻という私生活の大問題を抱えている。いかにも怪しげな詐欺師コンビが、意外な誠実さと思いやりを見せる。高慢に見えたプロデューサーの妻が、ヒロインのよき理解者になる。健康そうに見えるヒロインが、じつは時限爆弾のような病気を抱えているというのも、こうした外面と内面の違いのひとつだろう。こうした設定が観客の感動を呼ぶのは確かだと思うけれど、この映画の場合、手法がコレひとつしかないというのが少々弱くも感じられる。悪そうで悪い人とか、良さそうで本当に良い人など、もう少しいろんな個性が見えると物語に広がりが出たと思う。

 映画の中には何ヶ所か泣かされてしまう部分もあるのだが、そもそも僕はこのストーリーに重大な欠点があるように思う。子供や妻の死という不幸を最初から抱えたコメディアンは、そのイメージが強すぎて、仮にデビュー当初はちやほやされてもその後はかえって苦労すると思う。特に『キネマの天地』みたいなクライマックスは疑問符だらけだ。

(英題:Last Present)

2002年12月公開予定 シャンテ・シネ
配給:パンドラ 宣伝:スキップ、プランニングオム
(2001年|1時間52分|韓国)

ホームページ:http://www.seochon.net/lastpresent/

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