いたいふたり

2002/08/27 シネカノン試写室
唯野未歩子と斎藤久志監督3度目のコラボレーション。共演は西島秀俊。
「痛み」を共有するようになった奇妙なカップルのお話。by K. Hattori

 『フレンチドレッシング』『サンデイドライブ』の斎藤久志監督が、またまた唯野未歩子を主演に招いて作った不思議な恋愛ドラマ。『フレンチドレッシング』ではまだ思いっきり少女の面影を残していた彼女が、この映画では新婚の若妻を演じている。それにしてもこの初々しさ。キャメラの前でもまったく地のままのような芝居をする度胸と存在感。彼女は他にもいろいろな監督の作品に出ているけれど、こうして何度も斎藤監督と仕事をすることで、女優としてのいろいろな可能性が開拓されていくのだと思う。サブ監督と堤真一のコンビはもういい加減に飽きてきたけれど、斎藤久志監督と唯野未歩子のコンビ作はまだこれからも何本か観てみたい気がする。そうすればまたそこで、新しい唯野未歩子に出会えるような気がするのだ。唯野未歩子は強く自己主張をするわけではないけれど、大きな存在感を持った女優としてこれからまだまだ成長していく余地が残されている。どんなシチュエーションのどんな芝居をしても、この人はそこにぴったりと収まってしまうような度量の広さがある。こうした印象は、かつて浅野忠信にも感じたものだ。……というわけで、この映画は最新の唯野未歩子を観られるだけでも価値があるのだが、もちそんそれだけでは終らない面白さに満ちた快作なのだ。

 唯野未歩子の今回の相手役は西島秀俊。中田秀夫監督の『ラストシーン』、本作『いたいふたり』、甲斐田祐輔監督の『すべては夜から生まれる』、そして北野武監督の新作『Dolles』と、出演作4本がこの秋公開されるという売れっ子だ。その彼がこの映画では、東大出身で一時はアイドルカメラマンをしていたけれど、今は本業が塾の講師で、唯野未歩子演じる元看護婦と結婚したばかりのくせに、今でも機会があるたびに若い女性を軟派しまくるという、問題の多い、けれども憎めない愛嬌を持った男を演じている。ある日このふたりは、互いの「痛み」を共有するようになってしまった。妻が転べば夫の身体にも激痛が走り、夫が女性にひっぱたかれれば妻の身体にも痛みが襲いかかる。まさに運命共同体。だがそれでも夫の浮気は止まらず、妻にも言い寄る男が現れたりなんかして……。

 とにかく登場人物たちがみんな変人。ヒロインは帰宅した夫を脅かそうとして、よりにもよって冷蔵庫の中に隠れるという荒技を映画冒頭から発揮。夫の側も妻の留守中に写真のモデルと称して若い女性を家に連れ込み、そこで強引に相手の服を脱がせ始めるという乱暴狼藉ぶりを見せつける。「いたいふたり」という以前に、これは相当に「きついふたり」だと言えるだろう。

 シスコンの弟、ゲイの社長と若いボーイフレンド、太った女子高生、嫉妬深い芸術家とその妻など、脇役たちも大いに個性を発揮する。だが最後は結局、唯野未歩子と西島秀俊のツーショットにつきるのだなぁ……。

2002年10月公開予定 ユーロスペース
配給:リクリ
(2002年|1時間52|日)

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