Returner

2002/09/03 日劇2
未来から来た少女が凄腕の仕事人にある依頼をするのだが……。
主演は金城武と鈴木杏。監督は『ジュブナイル』の山崎貴。by K. Hattori

 『ジュブナイル』の山崎貴監督が、アジアの人気映画スター金城武、『ジュブナイル』でもヒロインを演じた鈴木杏、『新・仁義の墓場』ではじけた悪役ぶりを見せた岸谷五朗などを招いて撮った最新作。タイトルの『Returner』について、映画の公式サイトなどでは「依頼を受けてブラックマネーを取り戻す仕事」と解説しているが、映画の中ではこの“仕事”の名称について特に説明はなかったように思う。金を奪う以外にも、いろいろやってんじゃないの?

 前作『ジュブナイル』に惚れ込んだ僕としてはこの映画にも大いに期待したのだが、その期待はかなり大きく裏切られてしまった。物語がいろいろなSF映画のパクリだというのはまだいい。VFXに新味が感じられないというのも許せる。僕がこの映画で嫌だなぁと感じたのは、やたらと人が死んで、それについて何のためらいも感じていないらしい点だった。

 荒唐無稽なSFアクション映画なんだから、もちろん派手なアクションシーンもあるだろうし、そこでは大勢の人が死ぬでしょう。しかしそこでは生身の人間を人形やオブジェのように扱って「人殺し」の凄惨さを消し去るとか、止むに止まれぬ追いつめられた事情を作って主人公の発砲を正当化するような工夫が常に払われるべきだと思う。またこうした映画の場合、子供を殺したり、女性や子供に銃を撃たせることには特に慎重にならなければならない。鈴木杏が演じるヒロインが弟を殺されているというエピソードは、母親でも父親でもよかったはず。なぜあえて年端もいかない弟を殺す必要があるのか。もちろんこのエピソードが、金城武演じる宮本が幼い頃に親友を殺されたというエピソードとつながるという意図はわかる。しかしふたつのエピソードがうまくリンクし切れていないから、この無惨な死は映画の中で異様な死臭を放ってしまう。また死体の描写なども、なぜこんな風にリアルにする必要があるのか。戦いの無惨さ、残酷さ、無慈悲さを描くにしても、別の描き方があるはずだと思う。

 金城武の台詞回しがいつも一本調子で、喜んでいようが笑っていようが緊張していようが泣いていようが、いつも同じ調子で台詞を喋るという問題点もある。また鈴木杏も人類が滅亡寸前にまで追い込まれた未来から来たにしては、ホッペタなんてはち切れんばかりにふくよかで、顔つきにはまるで緊張感というものが感じられない。こうしたことは、単に僕個人の好みの問題かもしれないから大きな欠点だとは言うまい。しかし映画全体に漂う締まりのなさは、いったいどこに原因があるのか。どうもこの映画は編集のテンポが悪いように思う。導入部の大銃撃戦からして、既にちょっとボンヤリしているのだ。

 エンディングは面白いけれど、ちょっと時間を引っ張りすぎです。もっとテンポを詰めて手早く切り上げた方が、物語の余韻はふくらみが出たと思う。

2002年8月31日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
(2002年|1時間56分|日本)

ホームページ:http://www.returner.net/

Amazon.co.jp アソシエイトDVD:リターナー
サントラCD:RETURNER リターナー
エンディング曲:DIG IN(レニー・クラヴィッツ)
原作:リターナー(山崎貴)
写真集:金城武写真集 Returner MIYAMOTO
写真集:鈴木杏写真集 Milly-ANNE in Returner
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