実録・安藤昇侠道(アウトロー)伝
烈火

2002/09/05 東映第1試写室
日本一の量産監督・三池崇史が放つ豪華キャストのやくざ映画。
オープニングが『DOA』っぽいと思ったら……。by K. Hattori

 三池崇史監督の最新作。三池監督は今年だけで6,7本の映画が劇場公開されるのだが、1年にこれほど多くの作品を監督する監督というのは、昭和20年代や30年代の日本映画量産期にも、それほどいなかったのではないだろうか。ましてや今の日本映画界では、劇場にかかる新作映画の数自体がせいぜい300本弱なのだ。その中でひとりの監督が6本も7本も映画を撮るというのは、それだけでとんでもない事件と言って間違いない。

 脚本は『荒ぶる魂たち』と『新・仁義の墓場』に続いて三池監督とコンビを組む武知鎮典。主演は『DOA』シリーズで三池ファンにお馴染みの竹内力。共演者には三池作品の常連とも言える遠藤憲一、『荒ぶる〜』『新・仁義の〜』にも出演していた美木良介、やはり三池組常連の山口祥行、さらには石橋蓮司、力也、原田大二郎、志賀勝、ジョー山中、千葉真一、内田裕也、丹波哲郎など、とにかくオジサン濃度が充満した男臭いドラマになっている。女性も少しは登場するが、それは画面に色をそえる程度。この程度の色もなければ寂しい。またこの女性陣の小さなエピソードを、三池監督が情感たっぷりに描き出すから、オヤジ度の高い映画の中で一服の清涼剤になる。

 組織暴力団真田組の組長が、敵対する大滝会のヒットマンに殺された。警察もマスコミも流血の抗争勃発を予測するが、真田組と大滝会は仲裁に阪東連合幹事長の土方を立て、手打ちの方向で話がまとまりかけていた。じつはこの事件の裏では真田組と中条組のナンバーツー同士が手を握り、自分たちの組長を互いに潰すことで組織を我が物にしようとする陰謀が巡らされていたのだ。真田組に所属する主人公の国定は、そんなことを知らぬまま復讐のため大滝会長を射殺。だが間もなく国定は、事件の真相を知ることになる……。

 映画の前半から中盤、それどころか終盤ギリギリまで、映画は武闘派やくざの悲劇を真っ向からシリアスに描き出していく。保身に走る組織の論理に馴染めず、親分から受けた恩義に報いるために、自分の身を投げ出して復讐に走ろうとする男の姿。そんな男に惚れ込み、若い手下たちをすべて追い払った後も彼についていこうとする弟分。暴力の奔流におびえながらも、男の胸に飛び込んでいく若い女。組織同士の抗争に一応の体裁をつけるため、彼は組織からも放り出されて孤立無援の捨て駒になってしまうのだ。まさに八方ふさがり。

 ところがこの映画、最後の最後にとんでもない方向にねじれていく。途中にもなんだか怪しげなエピソードがいくつか散りばめられてはいるのだが、まさか丹波哲郎と内田裕也という豪華な配役が、こんなに素敵なオチのために用意された伏線だったとは思いもよらなかった。いったいこの映画を観始めた者のうち誰が、こんなにも突き抜け、爽やかな後味のエンディングを予想するだろうか。いやはや参りました。

2002年9月21日公開予定 新宿武蔵野館(レイト)
配給:東映ビデオ
(2002年|1時間36分|日本)

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