プロフェシー

2002/09/25 ソニーピクチャーズ試写室
『隣人は静かに笑う』のマーク・ペリントン監督が描く不思議な世界。
なんと実話がベースなんだそうです。本当かよ! by K. Hattori

 ワシントン・ポスト紙の敏腕記者ジョン・クラインは、ある晩愛妻の運転していた車で事故に遭う。運転中の妻が突然目の前に現れた“何か”に驚き、慌てて急ブレーキを踏んでスリップ事故を起こしたのだ。その際病院での精密検査で脳が特殊な腫瘍に冒されていることがわかった妻は、手術の甲斐もなく急死してしまう。「あれを見た?」という奇妙な言葉と、ノートに書きなぐった不気味なスケッチを残して……。それから2年。クリスマスが近づく街を抜けて郊外の道をあてもなく走っていたジョンは、人里離れた道の真ん中で突然車がストップ。時刻は深夜2時過ぎ。近くの民家まで歩き電話を借りようとしたところ、その家の住人は突然ジョンに銃を突きつけて「この男だ!」と叫んだ。

 主演はリチャード・ギア。監督は『隣人は静かに笑う』のマーク・ペリントン。この映画で描かれるのは、日常の中に少しずつ入り込む奇妙な現象の連鎖だ。1度だけなら勘違いや思い違いとして納得もできる。2度続いても「変な話」「不思議なこと」ぐらいで済まされる。でもそれが3度も4度も続いたら、そこには何らかの意図が感じられるのではないか。主人公の周囲に起きる不思議な現象。謎の人影。謎の声。それは幻視や幻聴で片づけられない。何しろ彼のもとにかかってくる不思議な電話の声は、ちゃんとテープレコーダーに録音することだってできるのだ。声の主はいったい何者なのか。いったい何の意図があって、ジョンに接触してくるのか。それは誰にもわからない。映画を最後まで観れば、声が何を示していたのかはわかる。だがその声が、何の目的でそのメッセージをジョンに伝えていたのか、それは最後の最後までわからない。

 おそらく内容からいっても、M・ナイト・シャマラン監督の『サイン』と比較される映画だと思う。『サイン』は徴候や前兆という意味。『プロフェシー』は予言(預言)という意味。シャマラン監督は『サイン』という映画を通して、信仰を失いかけた男を救う見えない大きな手の導きを描き出す。だがこの『プロフェシー』は同じように未知の領域から侵入する大きな手を描きつつ、そこに宗教的な意味をまったく持たせようとはしない。ここでは神や天使という存在も、まったく相対化されてしまう。人間を導く何かが存在したとしても、それが善意なのか、悪意なのか、それはまったくわからない。

 映画の原題は"The Mothman Prophecies"。モスマンというのは、大災害の前に近隣住民たちが見るという不思議な人影のこと。この映画の前半ではそれを「天使」とも呼んでいる。なるほどなと思う。旧約聖書によればソドムの町が滅びる直前、町に住む人々の前に不思議な男たちが現れた。それを「町の崩壊」と結びつけて解釈したロトと家族は町を離れたが、それ以外の人々はその見慣れぬ外来者を愚弄し辱めようとして身を滅ぼしたという。

(原題:The Mothman Prophecies)

2002年11月上旬公開 渋谷東急他、全国松竹東急系
配給:ソニーピクチャーズ・エンターテインメント
(2002年|1時間58分|アメリカ)

ホームページ:http://www.prophecy-movie.jp/

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原作:プロフェシー
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