ロード・トゥ・パーディション

2002/10/11 日劇1
トム・ハンクスとポール・ニューマン主演のアメリカ版『子連れ狼』。
サム・メンデス監督の演出力は確かなものだ。by K. Hattori

 『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督による、ギャング映画に翻案された「子連れ狼」。原作はマックス・アラン・コリンズとリチャード・ピアース・レイナーのグラフィックノベルだと言う。おそらくこの原作者たちが、英語に翻訳されてベストセラーになった「子連れ狼」を見知っていたのだろう。内容のあまりのクリソツぶりに、「この映画の製作者たちは、小池一雄と小島剛夕になにがしかの対価を払うべきじゃないの?」と思ったくらいだ。主演はトム・ハンクスとポール・ニューマン。ハンクスが演じるのは、ギャング組織の腕利きの殺し屋でありながら、理不尽な理由で組織の身内に妻子を殺されてしまったマイケル・サリヴァンという男。彼はたったひとり生き残ったまだ幼い息子と共に、冥府魔道の復讐街道を歩むことになる。つまりマイケル・サリヴァンは元公儀介錯人の拝一刀なのだ。一刀愛用の実用剣・胴太貫は、映画の中でサブマシンガンへと姿を変える。

 「子連れ狼」は主人公・拝一刀の刺客商売に、彼を付け狙う柳生一族との確執や戦いをからませて物語が展開していくのだが、この『ロード・トゥ・パーディション』はそのうち「対柳生一族編」を1930年代のギャング映画に翻案したものと言える。サリヴァン父子の関係がアメリカ映画にしては抑制された描き方になっていることや、窮地に陥った親子が奇手奇策を使って復讐への道を切り開くといった筋立ては、この物語が「子連れ狼」の影響下にあることを物語っているように思う。ただしこの映画は、「子連れ狼」の影響下にある原作グラフィックノベルをさらに映画用に脚色したという二段階の過程を踏んでいるためか、ひとつの映画作品としてかなりこなれたものになっている。

 映画の中には2組の親子が登場する。主人公のサリヴァン親子と、その仇敵となるルーニー親子だ。ルーニー親子の父、ジョン・ルーニーを演じているのがポール・ニューマン。ここでは時代劇にもありがちな「跡目相続と親子の情」というテーマが物語に入り込んでくる。ギャング組織の長であるジョンは、実の息子であるコナーよりも、幼い頃に拾い上げて目をかけてきたマイケルを可愛がり、その実力も高く評価している。これが実子であるコナーには面白くない。コナーにとってマイケルは、父の愛情を横取りする邪魔者なのだ。コナーが父の金を横領したのも、「自分こそが組織の正統な後継者なのだ」という自負心のささやかな現れかもしれない。「父の組織は自分の組織」「父の金は自分の金」「いずれ自分のものになるものに、今から手を付けて何が悪い?」ということだと思う。こうしたコナーの甘えと、その甘えを知りつつ何も手を打つことのできないジョンの親の情が、サリヴァン親子を苦しめるのだ。

 映画前半で暴力シーンの描写を抑制し、終盤の壮絶な復讐劇とその結末を際だたせる構成は見事。これはいい映画だ。

(原題:Road to Perdition)

2002年10月5日公開 日劇1他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
(2002年|1時間59分|アメリカ)
ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/roadtoperdition/

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