マイ・ラブリー・フィアンセ

2002/10/17 ソニー・ピクチャーズ試写室
フランス映画『おかしなおかしな訪問者』のアメリカ版リメイク。
主演はオリジナル版と同じジャン・レノ。by K. Hattori

 中世の騎士が現代にタイムスリップするジャン・レノ主演のコメディ映画『おかしなおかしな訪問者』を、スタッフもキャストもそのままで再映画化したアメリカ版。主演はもちろんジャン・レノ。監督・脚本のジャン・マリー・ゴーベールと、共同脚本でもうひとりの主演も兼ねるクリスチャン・クラヴィエはオリジナル通り。物語は少しアレンジされているが、12世紀の騎士が婚礼の席で大きな間違いをしでかし、その失敗を取り繕うため過去に戻ろうとするが、間違えて従者共々遠い未来(現代)にタイムスリップしてしまうという筋立ては変わらない。自分の婚約者にそっくりの子孫の家に居候するのも同じ。ヒロインを演じるのはクリスティーナ・アップルゲイト。あまり見慣れない顔だが、素直な感じが好印象の若い女優(といっても30代)だ。

 『おかしなおかしな訪問者』には『ビジター』という続編もあるのだが、このシリーズの見どころは、12世紀の騎士が現代にやってきたことで生じるエイリアン反応にある。12世紀の世界は、たとえ宮廷生活であったとしても、現代の価値観からすればかなり迷信深く、野蛮で、しかも衛生概念が現代とはまるで異なっている。身分の差は歴然として存在し、しかもそれについて誰も何の疑問も持っていなかった。主人公の騎士は12世紀の基準からすれば相当のインテリなのだが、食べ物はすべて手づかみで食べている。従者はテーブルに付かず、主人が食卓から放り投げる残飯をありがたく頂戴して生きている。こうした描写が12世紀のシーンで登場すると、「なるほどしっかりと時代考証がしてあるわい」ということになるのだが、同じ状況がそのままそっくり現代に持ち込まれると、これが相当にヘンテコなことになる。

 魔法の薬の力で現代の博物館に飛び出した主人公たちが、「ここは地獄に違いない」と言うところから既に笑ってしまう。現代人が12世紀のヨーロッパに放り込まれたら、きっとその不潔さと薄気味悪さを地獄だと思うだろう。ところが12世紀の人間が清潔で便利な現代にやってくると、それはそれでやはり「地獄だ!」ということになる面白さ。発達した科学は中世人にとって魔法そのもの。見るもの聞くものすべてが物珍しく、それまで見たことがないものは12世紀的な知識で類推するしかない。そこで巻き起こるトンチンカンな出来事の数々は抱腹絶倒だ。騎士と従者は車に乗れば馬以上の速度に耐えられず、電灯のスイッチを飽くことなくいじくり回し、水洗トイレを見て「泉だ!」と顔を洗い、風呂に入れば練り歯磨きを食べてしまい、高級レストランに行っても12世紀の流儀で従者に残飯を投げ与える。

 映画後半は主人公たちが魔法で過去に戻る話になるが、ここで魔法使いを演じるのがマルコム・マクダウェル。このぐらいクセのある役者でないと、主人公コンビの強烈な個性には対抗できないのだろうなぁ……。

(原題:JUST VISITING)

2002年11月30日公開予定 シネマ・メディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給協力:メディアボックス
(2001年|1時間28分|アメリカ、フランス)
ホームページ:http://www.spe.co.jp/

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DVD:マイ・ラブリー・フィアンセ
サントラCD:JUST VISITING
原作DVD:おかしなおかしな訪問者
関連DVD:ビジター
関連DVD:ジャン・レノ

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