ザ・リング

2002/10/18 イマジカ第1試写室
鈴木光司原作のホラー映画をハリウッドのスタッフで再映画化。
原作は小説ではなく日本版の映画そのものだ。by K. Hattori

 '98年に公開されるや日本中に「貞子ブーム」を巻き起こした和製ホラー映画の傑作『リング』を、ハリウッドでそのまま再映画化した話題作。監督は『マウス・ハント』『ザ・メキシカン』のゴア・ヴァービンスキー。主演は『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツ。原作はもちろん鈴木光司の同名小説だが、この映画はその筋立てから描写の細部に至るまで、すべてを高橋洋の脚本と中田秀夫監督の手による映画版『リング』に倣っている。

 とにかく導入部から結末まで、ほとんどすべてが中田版『リング』とすっかり同じなのだ。友だちの家に泊った女子高生の急死。そこで語られる「見ると7日目に死ぬビデオテープ」の噂。死んだ女子高生の親戚にあたる女性ジャーナリストが聞きつけた、同じ日の同じ時間に死んだ4人の男女の話。女子高生の部屋から見つけた写真の引換券。スナップ写真の中で大きく歪んだ顔。ペンションの棚で見つけた無表示のビデオテープ。ヒロインが見た謎の映像。そしてビデオ終了と共にかかってくる1本の電話……。

 僕は鈴木光司の原作小説より、映画版『リング』の方が数段優れていると思っている。特に主人公の浅川と協力者の高山竜司を元夫婦という設定にし、ふたりが協力しあいながら幼い息子を助けようとする話にしたのは慧眼だった。それを下敷きにした『ザ・リング』は、映画版で導入された「夫婦と子供」というモチーフをさらに強調する。映画の中には主人公と息子の親子関係に対応する、もうひとつの親子関係が登場する。一方の夫婦は子供を救うために奔走するが、もうひと組の夫婦と子供は……という趣向だ。

 主演のナオミ・ワッツは、いかにも『リング』の松嶋菜々子をお手本にしていますという雰囲気。この母親と息子についての描写はなかなか見応えがあって、原作となった日本版『リング』にも負けていないと思う。しかし難点は、彼女と謎解きの旅をする元夫だろう。日本版でこれを演じたのは真田広之だったが、ハリウッド版で同じ役を演じているのはマーティン・ヘンダーソン。『ウインドトーカーズ』にも出演していた俳優だというのだが、今回の映画でナオミ・ワッツと互角の活躍するにしては少々力不足。この役にもう少しでも有名な俳優が出演していると、この映画はずいぶんと印象が変わっただろう。

 しかしこの映画、原作となった日本版の映画をよく咀嚼した上で、その延長上に新しい恐怖演出を加えているとも思う。中でもフェリーのシーンは、動と静のコントラストがショッキングな効果を生みだしている。

 恐怖が向こうからやってくるのではなく、あえて恐怖の核心へと主人公たちが接近していくのがこの物語の恐さでもある。日本で生まれたリング・ウィルスが、こうして海を越えて映画の本場ハリウッドにたどり着いたのは、何はともあれ快挙と言っていいだろう。

(原題:The Ring)

2002年11月2日公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:アスミック・エース、角川書店
(2002年|1時間56分|アメリカ)
ホームページ:http://www.thering.jp/

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DVD:ザ・リング
関連DVD:ゴア・ヴァービンスキー監督
関連DVD:ナオミ・ワッツ
原作小説:リング(鈴木光司)
原作映画:リング(中田秀夫監督)

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