シベリア超特急3

2002/10/21 松竹試写室
MIKE MIZUNO(水野晴郎)監督の監督・脚本・主演による、
人気ミステリー・シリーズの第3弾が登場。by K. Hattori

 好きな人にとっては、誰が何と言おうとすごく好き。そうでない人にとっては、どこがどう面白いのかさっぱりわからない。それがカルトムービー。MIKE MIZUNO(水野晴郎)監督の『シベリア超特急』シリーズは、現在進行形で製作され続けているカルトムービーだ。僕自身は「どこがどう面白いのかさっぱり……」の部類だけれど、これが一部では大ウケにウケているのは事実なんだから困ってしまう。(別に僕が困ることはないが。)監督もファンたちの熱い声援に応えて、すっかりその気になっている。

 これが監督の大いなる勘違いによるものなのか、それともある程度は計算した上でのポーズなのか、それは監督本人にしかわからない。おそらくこのシリーズのファンは、ミズノ監督が計算高く「日本のエド・ウッド」を演じているのであろうことを十分に意識しつつ、それでも時折感じられる「この人、ひょっとしたらホントにその気なのかも」という危うさを楽しんでいるのだ。

 いつも豪華な出演陣が自慢の『シベ超』シリーズだが、今回の主演スターは三田佳子と宇津井健。三田佳子は息子の不祥事で芸能活動を自粛していたが、そこからの復帰作がこの作品ということになる。じつはこのキャスティングそのものに、とんでもないトリックが隠されているのだが、それは最後のお楽しみ。今回の映画は、1941年にヨーロッパ視察からシベリア超特急で帰国する山下奉文大将が列車内で遭遇する殺人事件と、それから60年以上たった現代、瀬戸内海をクルーズする豪華客船で起きた殺人事件が交錯する二段構えのミステリーになっている。ふたつの事件をつなぐのが、かつてシベリア超特急で山下大将と出会ったことがあるふたりの男性。60年前に列車内で起きた密室殺人事件と、現代日本で起きた豪華客船内の殺人事件の類似性。60年前の事件が語られていく中で、現代の事件の謎も少しずつ解けてゆく……。

 まったく緊張感のない弛緩しきった長回しには参ったけれど、その他の部分についてはだんだん「普通に下手くそな映画」のレベルにまで技術が向上しているようにも思う。問題はやはりストーリー展開だろう。もっともこの映画については「これでいいのだ」と納得して観るしかないような部分があり、あれこれと細かな批判をしても仕方がない。

 それにしても山下大将は何度事件に遭遇したら気が済むのだろうか。このシリーズは山下奉文がヨーロッパ視察からの帰国にシベリア鉄道を使ったという“史実”をもとにしているらしいのだが、その間に大将は何度も何度も事件に遭遇するのだ。(ちなみにこの時点で実際の山下奉文はまだ陸軍中将だったはず。)列車の旅にどの程度の日数がかかるのかは知らないが、それにしても次から次によく事件が起きるものだ。次回作『シベリア超特急4』は舞台劇になるそうだが、そこではどんな事件が起きるのか……。

2003年1月2日公開 新宿シアターアプル
配給:M&T PICTURES 宣伝:ビー・ウィング
(2002年|1時間54分|日本)
ホームページ:http://www.mizunoharuo.com/

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