呪怨

2002/10/24 メディアボックス試写室
OVホラーとして好評だった『呪怨』シリーズを清水崇監督自ら映画化。
恐怖描写の波状攻撃に脳みそが溶けそうになってくる。by K. Hattori

 OVホラー『呪怨』『呪怨2』で注目された清水崇監督が、満を持して放つ劇場版『呪怨』。僕はビデオ版を未見なのだが、これはかなり完成度が高いものだと各界から評判になり、小規模ながら劇場でも公開されたらしい。今回の劇場版『呪怨』がビデオ版とどのような関係を持っているのか、それは僕にはよくわからない。だがビデオを観ていなくても、映画だけで十分に恐くて楽しい作品になっていると思う。僕は映画を観ながらずっとニヤニヤ笑っていた。

 僕は本当に恐い映画を観るとついニヤニヤしてしまうクセがあり、中田秀夫監督の『リング』でも、黒沢清監督の『CURE』や『回路』でも、三池崇史監督の『オーディション』でも映画を観ながらニヤついていた。映画で観客を恐がらせるにはいろいろなテクニックが必要で、その手順や力加減が狂ってしまうと観客は容易に恐がってくれない。要するに「観客を恐がらせる」映画は、段取りが非常に上手いのだ。僕はその段取りの巧みさに舌を巻き、恐がると同時に「すごいなぁ」「うまいなぁ」とニヤニヤ笑ってしまう。この『呪怨』はそんな僕にとって、久しぶりに心おきなくニヤニヤできる映画だった。

 舞台は東京郊外の住宅地にある、ごく普通の一戸建て住宅だ。福祉センターでボランティアをしている仁科理佳は、連絡の付かない契約家庭を訪問するよう施設の職員に頼まれ“その家”を訪れる。乱雑に散らばった部屋の中にたたずむ、痴呆症の老婆とひとりの少年。家族が誰も帰宅しない中、理佳は部屋の中で奇妙な影を目にする。いったい部屋の中に何がいるのか?

 物語はこの家にまつわる人々と、家と関わりを持ってしまった人たちを通して、そこにうごめき、近寄る人たちに取りつき離れることのない怨霊のような何かを描いていく。映画は複数の人物の視点ごとにエピソードを区切ったオムニバス風の構成になっているが、エピソードとエピソードは互いに補完し、影響を与え、全体としてその家についての大きなドラマを作っていく。

 この映画の恐さは、日常的にふと感じる不安感の延長に用意されている恐さだ。薄暗い道を歩いている時、ふと背後に感じる人の気配。暗い廊下や階段の曲がり角を、曲がりきった時だしぬけに人と出会う恐怖。誰もいないはずの部屋に飛び込んだら、そこに思いがけなく人影があった時の驚き。急激な人の出現だけが恐いわけではない。背後にいたはずの人が急に見当たらなくなるという、消失型の不安や恐怖もある。これらを巧みに組み合わせ、その先に数々の超常現象を用意しているのが、この映画の上手いところだろう。
 
 この映画は恐怖の対象となる幽霊を、かなり早い時点からしっかりと画面に映し出す。だがその正体や、なぜ幽霊が現れるのかについては、最後の最後まで説明がない。それらの存在理由が不確かなことが、一層の恐怖を高めている。

2003年1月下旬公開予定 テアトル新宿
配給:東京テアトル、ザナドゥー
(2002年|1時間32分|日本)
ホームページ:http://www.cinemabox.com/

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