ハリー・ポッターと秘密の部屋

2002/11/07 丸の内ピカデリー(完成披露試写)
人気のハリポタシリーズ第2弾は、エピソード詰め込みすぎで窮屈。
そもそも今回はクリス・コロンバスのカラーじゃないよ。by K. Hattori

 昨年の大ヒット作『ハリー・ポッターと賢者の石』の続編。主人公ハリーはホグワーツ魔法魔術学校の2年生に進級するが、そこでは前作以上の危険と冒険が待ちかまえていた……。新しいキャラクターが登場したりしているが、スタッフとキャストはほぼ原作通りの布陣。前作同様、映画1本でホグワーツの1年間を描いていく構成なのだが、これで2時間41分は少々中途半端な上映時間だと思う。ある程度まとまりのあるエピソードを時系列につなげていくのだが、それがスムーズなひとつの物語として流れていかないのだ。

 本当なら原作を思い切って大きく刈り込み、ひとつのモチーフで一本筋を通しておいてから他のエピソードで全体を肉付けしていけばいいのだが、何しろ原作通りの構成で前作が大ヒットしてしまっため、今回も基本的には同じ路線を踏襲したらしい。ストーリーの流れに無関係なエピソードは割愛してしまえばいいのにそれもできず、強引に話をコンパクトにまとめようとして、かえって各エピソードが中途半端な描写に終ってしまったように思う。この構成で映画を作るなら、上映時間が3時間は必要です。

 例えば今回の映画の新キャラクターであるジニー・ウィーズリー。彼女は物語の中で重要な鍵となる人物なのだが、映画前半でまるきり存在感がアピールされていないため、終盤で再登場した時はやけに唐突な印象を受ける。「ホグワーツに来てはなりません」とハリーに警告を与える屋敷しもべ妖精のドビーにしても、なぜホグワーツ行きを禁じたがるのかや、彼がどんな主人に仕えているのかというミステリーが、まったく物語の推進役にはなっていない。1作目で個性を存分に発揮したハリーの親友ロンとハーマイオニーも今回は影が薄いし、憎まれ役のドラコ・マルフォイも、三人組の後見人とも言えるハグリッドもとりあえず出てくるだけの存在。そのキャスティングが大いに話題となったケネス・ブラナー扮するギルデロイ・ロックハート先生も、本当ならもっと盛大に笑いを取れそうなのに、まったく面白くもおかしくもない。とにかくすべての人物が「原作にも出てきたので、とりあえず出てます」という感じ。

 原作の読者なら誰でも知っていることだが、ローリングの書く原作小説は1作ごとにその厚みを増している。日本版の最新作「ハリーポッターと炎のゴブレット」に至っては2巻組になってしまった。この調子で原作通りの映画化を続ければ、おそらく次回作あたりで映画作品としては破綻してしまうことが目に見えている。監督のクリス・コロンバスが第3作目の監督を投げ出したのも、1作目以来の方法論では次が作れないと考えサジを投げたのではなかろうか。

 今回は映画に力がないせいか、これが遺作となったリチャード・ハリスの衰えばかりが目についてしまった。そう意識してるからかもしれないけどね。

(原題:HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS)

2002年11月23日公開予定 丸の内ピカデリー1&2他・全国松竹東急系
配給:ワーナーブラザース映画
(2002年|2時間41分|アメリカ)
ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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DVD:ハリー・ポッターと秘密の部屋
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原作:ハリー・ポッターと秘密の部屋
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