仔犬ダンの物語

2002/11/15 東映第1試写室
団地に住む女の子が目の見えない子犬を拾ってきて……。
実話をもとにした児童映画。監督は澤井信一郎。by K. Hattori

 モーニング娘。主演のアイドル映画かと思ったら、これが意外なことに、小学生の女の子たちが主人公の児童映画だった。監督は澤井信一郎。丁寧できめ細かい演技指導で有名な澤井監督だが、この映画でも小学生子役たちの棒読み台詞をそれなりに物語の中にはめ込んで、少しぎくしゃくしながらもキリリと引き締まった作品に仕上げていると思う。これは売れっ子のモーニング娘。たちを、完全に〈脇役〉に追いやってしまったことが成功したのだろう。

 映画の脚本はオリジナルだが、この映画はもとになった物語がある。愛媛県松山市の市営団地で、仲良しの女の子ふたりが目の見えない子犬を拾ってくる。団地の規則で犬は飼えない。ふたりは必死になって犬の引き取り手を捜すが、目の見えない雑種の犬を引き取る人は見つからない。少女たちの思いを知った団地の自治会長は、住民と市の担当者に掛け合って、この子犬を団地で飼えるように説得する。だが「ルールは守るべきだ」と言う住人たちの心を動かしたのは、少女の切実な言葉だった。「盲導犬は目の見えない人を助けるのに、どうして人間は目の見えない犬を助けちゃいけないの?」……。

 映画はこの実話をもとにして、主人公の少女たちのキャラクターなどをかなり自由に脚色している。主人公の女の子・森下夏生は、両親の離婚に反発して祖父のもとにやってきた小学4年生。両親の離婚は自分に関係ないと強がってみても、家庭がバラバラになるという事件は夏生の心を深く傷つけている。周囲に必要以上に気をつかい、いじめられても耐え、友だちなんていらないと強がりを言う。それが10歳の女の子なりの精一杯の抵抗なのだ。そんなある日、夏生はコンビニで牛乳を万引きする女の子を見つける。「私が飲むんじゃないの。犬にあげるの」というその子の名前は野村千香。同じ小学校の生徒でもある千香は、捨てられた子犬を拾ったものの団地では飼えず困り果てていた。

 夏生の両親は離婚して家族はバラバラ。千香の家は、母親と子供3人の母子家庭。子犬のダンを救うためふたりに協力しようとする自治会長宅は、会長と娘のふたり暮らしという父子家庭。この映画にはじつにいろいろな形の家庭が登場する。両親と子供をワンセットにした伝統的「核家族」の姿は、今の日本では疑う余地のない“標準的な家庭”として機能できないのだ。またこの映画の中では女の子たちが断然元気で、男の子たちはまったく影が薄い。モーニング娘。を軸にしたキャスティングになっているため必然的にこうなっている面もあるのだが、こうした女の子ばかりの映画が不自然に見えないところが、今という時代なのかもしれない。とにかく男は影が薄くてしょぼくれてるよ。

 榎木孝明と原田美枝子が夏生の両親を演じ、柄本明が自治会長、斉藤慶子が千香の母役など、ベテランに脇を固めさせることで映画が引き締まった。

2002年12月14日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映
(2002年|1時間10分|日本)
ホームページ:http://www.toei.co.jp/musume_maru/

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