アウトライブ
飛天舞

2002/12/09 松竹試写室
韓国の人気コミックを映画化した大チャンバラ・メロドラマ。
武侠映画が好きな人は必見。これは面白い。by K. Hattori

 元朝末期の14世紀中国大陸を舞台に、高麗族の血を引く剣士ユ・ジナとモンゴル族の美女ソルリの悲恋を描く波瀾万丈の剣劇メロドラマ。登場人物は多く、物語にもかなりの紆余曲折があるのだが、主人公たちを中心とした愛と葛藤のドラマという芯がしっかりしているため、ストーリーを見失うことはない。これは脚本と演出がしっかりしているからだろう。原作は韓国の人気少女漫画だというが、映画はかなりゴツゴツとした手触りの骨っぽい仕上がり。監督・脚本のキム・ヨンジュン(チョン・ヨンギと共同脚本)はこれが監督デビュー作だというが、なかなかどうして手際がいい。メロドラマ部分はどうしても先が読めてしまう部分もあるのだが、そうした弱さを活劇の激しさが補っている。もっともこれは『スウォーズマン』や『ワンチャイ』シリーズなどの香港武侠片を完全に模倣したものなので、香港製のアクション映画を見慣れている目に新鮮味はない。でも面白そうなジャンルに果敢に挑んでいくのは、映画製作者達の本能のようなもの。ハリウッドは香港武侠片に憧れて『グリーン・デスティニー』を作った。『アウトライブ』はその韓国版みたいなものだ。

 幼い頃に両親を亡くして伯父に育てられたジナは、近くに住む美しい少女ソルリと心を通わせ、いつしか相思相愛の仲になっていた。だがソルリの母が亡くなると、彼女は父であるタルガ将軍に引き取られ、愛するふたりは涙の別れ。やがて一族に伝わる「飛天神記」によって剣の道を究めたジナは、ソルリと再会するためタルガ将軍の屋敷がある町に出かける。だがそこで彼が聞いたのは、将軍のパトロンでもある町の豪族の息子ジュングァンとソルリが結婚するというニュースだった。ジナはソルリを連れて逃げようとするのだが、将軍の軍勢が放った矢を胸に受け、目もくらむような断崖絶壁から川の中に墜落する。誰もがジナの死を確信した。ソルリさえも。彼女はジュングァンと結婚して子供を産み、10年ほどの年月が流れる……。

 この物語はすべて、美しい女主人公ソルリを中心に回っている。ジナはソルリを愛し、ジュングァンも彼女を愛し、息子ソンは母として彼女を慕い、兄ライは彼女の保護者として降るまい、父タルガ将軍も彼なりの方法で娘の幸せを願っているのだろう。ソルリとジナを底辺とした、ふたつの三角関係。ソルリの夫となったジュングァンとジナの間にある友情。反乱組織の女戦士ジンが、ジナに傾ける恋慕の情。こうした三角関係のドラマを成り立たせるためにも、主人公のジナとソルリは観客の誰もが「なるほど!」と思うだけの存在感を持っていなければならない。ジナは不遇な運命にもてあそばれる悲劇の剣士として物語を引っ張っていくが、ソルリのドラマは常に受け身のも。それでいながら、彼女の存在感が堂々と物語を支えきっている。演じているキム・ヒソンの凛とした美しさが、映画の注目点かもしれない。

(原題:飛天舞)

2003年1月公開予定 渋谷東急3他・全国松竹東急系
配給:松竹
(2000年|1時間57分|韓国)
ホームページ:http://www.outlive.jp/

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DVD:アウトライブ
原作:飛天舞(キム・ヘリン)

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