カンパニー・マン

2002/12/11 GAGA試写室
平凡なサラリーマンが命がけの産業スパイ戦争に巻き込まれていく。
『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督最新作。by K. Hattori

 『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督5年ぶりの新作は、ハイテクを駆使した本格スパイ・スリラー映画。この場合「本格」というのは、主人公が人間離れしたスーパーマンではなく、敵に比べて遙かにオーバースペックの秘密兵器などを所持していないという程度の意味。

 勤めていた会社を辞め、世界有数の産業スパイ派遣会社デジコープに入社したモーガン・サリバン。彼は凄腕の産業スパイ、ジャック・サースビーに姿を変え、全米各地で開催されている業者向けセミナーに出席しては、パネリストのスピーチを録音して本部に送る仕事を始める。凄腕の産業スパイにしては、やけに地味な仕事だ。だがこのセミナーには秘密があった。じつはこのセミナーはクライアントのライバル企業が開催しているものではなく、デジコープ社自身が開催する洗脳セミナーだったのだ。スパイを命じられてセミナーに参加したデジコープの社員たちは、催眠術とハイテク洗脳マシンを使って、死さえ厭わない純度100%のスパイへと生まれ変わる。

 主人公モーガンを演じるのはジェレミー・ノーザム。彼を助ける謎の美女リタ・フォスターを、『チャーリーズ・エンジェル』のルーシー・リューが演じている。前作『CUBE』は密室型のサスペンスだったが、今回の映画は主人公が全米各地を転々とするスケールの大きなサスペンス。もっとも主人公がいる場所はセミナー会場だったり、飛行機の中だったりするので、空間的な広がりが具体的なビジュアルとして目に飛び込んでくることはない。移動は便宜的なもので、映画の印象としてはやはり密室劇に近いものだ。

 この映画のシナリオを書いたブライアン・キングという新人脚本家は、ヒッチコックの傑作スパイ映画『北北西に進路を取れ』が大好きなのだそうだ。そうと知らずにこの映画を観ていても、『北北西〜』からの影響は明らかだと思う。どこがどういう風に影響を受けているのかをここで指摘してしまうとネタバレになってしまうので避けるが、もし事前に『北北西〜』を観ていると、この映画の結末部分は案外簡単に途中でわかってしまうかもしれない。主人公がタクシーから降りる場面に「あっ!」と思う人も多いでしょうが……。

 この映画にはもう1本、あるSF映画の影響が感じられるのだけれど、そのタイトルをここで書いてしまうと完璧にネタバレになってしまうなぁ。

 『北北西〜』は主人公がヒロインを助けようとすることが、主人公の行動の大きな動機付けになっていた。ところが本作の主人公は、最初から最後までヒロインに助けられてばかり。やはり男は弱くなったのかなぁ……。

 『CUBE』の面白さを期待すると、今回はずいぶんと様子が違ってガッカリするかもしれない。この映画は世界に先駈け日本で先行公開。アメリカやカナダでは、この映画の公開に二の足を踏んでいるってことかな?

(原題:CYPHER)

2003年1月18日公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給 協力:アースライズ
(2001年|1時間35分|アメリカ)
ホームページ:http://www.companyman.jp/

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DVD:カンパニー・マン
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