サイドウォーク・オブ・ニューヨーク

2003/02/17 メディアボックス試写室
『彼女は最高』のエドワード・バーンズ監督最新作。
ニューヨークを舞台にした男女6人の恋物語。by K. Hattori

 『プライベート・ライアン』や『15ミニッツ』などで、最近は役者としてもすっかりメジャーな顔になってきたエドワード・バーンズ監督の最新作。ニューヨークを舞台に、19歳のウェイトレスから39歳の歯科医まで、年齢も職業も経歴も違う男女6人の恋模様を描いている。人物が交差しながら複数の物語が同時進行していく様子は、キャメロン・クロウ監督の『シングルス』を連想させる。恋愛映画と呼ぶほど濃密なラブストーリーではないが、ある程度の年齢になっている観客なら、登場人物のぎこちない恋に多かれ少なかれ感情移入できることだろう。監督・脚本・出演を兼ねているのはエドワード・バーンズ。共演は撮影当時バーンズと交際していたというヘザー・グラハム、大ベテランのスタンリー・トゥッチ、デニス・ファリナ、そして若手のデイヴィッド・クラムホルツ、ブリタニー・マーフィー、ロザリオ・ドーソン。ん? 7人いるって? 今回デニス・ファリナは恋愛物語の方には不参加なのです。

 『マクマレン兄弟』や『彼女は最高』でアイルランド系という自らの出自を前面に押し出したバーンズは、続く『ノー・ルッキング・バック』でローレン・ホリー主演の女性映画に挑戦。しかし僕はこの3作目を、あまり面白いと思わなかった。やはりバーンズには、彼自身の視点がきちんと定まった男っぽい映画が似合うような気がする。今回の映画では登場人物が男女半々になっているし、登場人物それぞれの視点から物語が語られるという構成。ところがこの中で見られる「女性の視点」の上手さ! これには参った。特にバーンズ扮するトミーが、2回だけデートした女性に「もう君には興味がなくなった」と言って別れるシーンなど、僕の気持ちは完全に相手役のロザリオ・ドーソンに傾いてしまった。別にどちらが悪いわけでもないのに、互いの気持ちがすれ違っていく。このシーンは、この映画全体を象徴するような場面だと思う。

 エピソードの中で一番ラブストーリーらしく仕上がっているのは、ドアマンをしている若い男と不倫中のウェイトレスの話だろう。彼女にさんざん振り回された男が、仕事中に思わず泣き出してしまうシーンはじつによかった。別れた妻への気持ちを振り切るため、とりあえず手近な女の子とつきあい始めたつもりだったのに、彼女が去って行ったことで初めて自分が本当に彼女を愛していたことに気づく男の姿。僕も昔は同じように泣いたことがあるよ。今からもう、かれこれ10年以上前の話だけどさ。この場面を観てそれを思い出した。

 登場人物へのインタビューを物語の合間にはさむことで、時間経過や視点の変化を素早くさせ、会話シーンに回想シーンを突然カットインさせる手法で物語にアクセントを付けている。このカットインの素早さは、編集マンの腕の見せ所だったかもしれない。タイミングがなんとも気持ちいいのです。

(原題:SIDEWALKS OF NEW YORK)

2003年GW公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
配給協力:東京テアトル 宣伝協力:スキップ
(2001年|1時間47分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.uipjapan.com/phej/

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DVD:サイドウォーク・オブ・ニューヨーク
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