CUBE2

2003/02/18 松竹試写室
低予算ながらクレーバーな印象を残したSFサスペンス『CUBE』の続編。
しかし本作はかなり凡庸なできに終ってしまった。by K. Hattori

 閉館直前のシネ・ヴィヴァン六本木で、異例のロングランヒットを記録したカナダ製SF映画『CUBE』の続編。ただし物語は一度切れていて、今回は新たに人選された被害者(被験者?)たちが、新しく別のキューブで目覚めたところから物語が始まる。監督は前作のヴィンチェンゾ・ナタリから、アンドレイ・セクラにバトンタッチ。美術と視覚効果のスタッフを前作から引き継いで作品間の連続性を保ちながら、今回の映画はかなり自由に作品を再解釈している。

 続編映画は1作目に及ばないと言うのが映画界の定説だ。ごくまれに続編の方が完成度が高くなったり、1作目とはまったく別コンセプトに展開して面白くなることもあるが、世の中にあるほとんどの続編は1作目に及ばない。残念ながら今回の『CUBE2』も、その定説を覆すことはできていない。

 前作ではキューブ(立方体)ひとつひとつに仕掛けられたさまざまな罠によって、登場人物たちがひとりずつ犠牲になっていくのが見せ場になっていた。だが今回は様子が違う。命に関わる罠は確かにいくつも仕掛けられているのだが、その危機感が1作目に比べるとずっとトーンダウンしているのだ。命がけのトラップに替わってこの映画のユニークさとなっているのは、通常の時空概念を超越して存在する、新しいコンセプトのキューブだ。部屋ごとに重力の方向が異なり、それどころか時間の進み方までが違う新しいキューブ。こんなキューブを一体誰が、どんな目的のために作ったのか?

 新しいキューブのアイデアはなかなかユニークで、方法によっては1作目とはまったく別の雰囲気を持つサスペンス・ミステリーとして成立し得た話だと思う。しかしこうした物語に必要な緻密な構成力が、この映画の脚本には欠けている。次々に出てくるアイデアを一度種類ごとに整理して、物語のどこにどのアイデアを当てはめるのが効果的なのか、よく考えてみる必要があったように思えてならない。

 登場人物の数が無駄に多く感じるのは、キャラクターの性格付けなどが薄っぺらで、ほとんどの人物が都合のいい時に都合のいい台詞を語る段取り芝居をしているからだろう。今回の映画では、窒息しそうな密室の恐怖がほとんど伝わってこない。登場人物が段階的に増えていき、全員揃ったと思うとまたバラバラになってしまうという物語の構成は、ドラマの緊張感をそいでしまったのではないだろうか。一行がバラバラになることで、全員がキューブについての謎や恐怖について共通の情報を共有し、同じ謎の解明に向って行くというドラマの芯が失われてしまったように思う。映画は終盤で「もうなんでもあり!」という状況に突入してしまうのだ。こうなると緊張感もへったくれもない。

 映画のラストはさらに続編を作れるような形で収めたが、かなり才能のある人が3作目を担当しないと、シリーズ存続は困難だと思う。

(原題:CUBE2 HYPERCUBE)

2003年4月25日公開予定 ヴァージンシネマズ六本木
配給:メディア・スーツ&クロックワークス共同配給
協力:プレシディオ 宣伝:メディア・スーツ
(2002年|1時間35分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.cube2.jp/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:CUBE2
関連DVD:CUBE
関連DVD:アンドレイ・セクラ監督

ホームページ

ホームページへ