奪還 DAKKAN
−アルカトラズ−

2003/03/03 SPE試写室
スティーブン・セガールが刑務所を襲うテロリストと戦う。
共演は人気ラッパーのジャルール。by K. Hattori

 自動車泥棒のサーシャは相棒ニックと仕事中、FBIに踏み込まれて撃たれる。それから数ヶ月後、一度は仮死状態に陥っていたサーシャは無事回復し、ハイテク装備で再開したアルカトラズ島刑務所に送り込まれた。相棒ニックが、命の恩人であるサーシャとの再会を喜んだのは言うまでもない。だがそんな刑務所には、間もなく死刑を迎えるひとりの囚人がいた。かつて2億ドル相当の金塊を盗んで逮捕されたレスターだ。彼は隠した金塊の在処を一言もしゃべらないまま、静かに自分自身の死を迎え入れようとしていた。だが彼の処刑が目前に迫った時、刑務所は武装テロリストたちに占拠される。彼らはレスターを誘拐して、金塊の隠し場所を喋らせようとしているのだ。用意周到な計画的犯行。しかし彼らにとって最大の誤算は、収監中の囚人サーシャがFBIの潜入捜査官だったことだ……。

 スティーブン・セガール主演のB級アクション映画。テロリストがある施設を襲うと、そこにたまたまセガール扮する異様に強い男が居合わせ、テロリストたちの目論見は崩壊してしまうというお話。つまりこれは、『沈黙の戦艦』などとまるで同じパターンの繰り返しなのだ。今回はセガールがFBIの潜入捜査官という設定になっていたり、場所がアルカトラズ刑務所になっているなどの設定が新しいのかもしれないが、この設定が映画の中でほとんど生きていない。そもそもこうした設定を、きちんと生かそうとした気配すら感じられない。

 潜入捜査官が主役の映画では、彼の正体がいつ周囲にバレてしまうかというサスペンスがドラマを盛り上げるのが常道。しかしこの映画では、主人公自身が「今まで黙っていたけれど」と打ち明け話をしてしまう。だとしたら彼が危険を冒してまで潜入捜査官になった理由にドラマがあるのか? 潜入捜査官である彼が、仲間であるはずの捜査官に撃たれてしまったという疑問にドラマの鍵が隠されているのか? あるいはFBI捜査官であることが、テロリストに伝わるか伝わらないかがドラマの肝なのか? じつはこうした新展開が、この映画にはまるでない。だったら別に、主人公が本物の自動車泥棒でもいいんじゃないの? 妻子を殺されたケチな泥棒が、復讐のために犯罪組織に潜入していたという話でも一向に構わないように思うのだ。彼が匿名の内通者として、FBIに情報を流していたという設定にしたっていいわけだし……。

 結局セガールの映画というのは、「警察=善人」「犯罪者=悪人」という善悪二元論が原則になっているらしい。今回の映画では囚人たちがテロリストと対決するという点で、「犯罪者=悪人」というステレオタイプからは脱している。しかし主人公に関しては、「彼は警官だから善人です」というパターンを抜け出せない。でもセガール映画の盤石ぶりは、案外こうしたキャラクターの固定化にあるのかもしれない。

(原題:HALF PAST DEAD)

2003年5月公開予定 シネマメディアージュ他全国
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 宣伝:メディアボックス
(2002年|1時間38分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/

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