ブラック・ダイヤモンド

2003/03/05 ワーナー試写室
盗み出されたブラック・ダイヤモンドを巡る三つ巴の攻防。
ジェット・リーとDMXが共演したアクション映画。by K. Hattori

 トニー・フェイトは依頼次第でどんな困難な盗みでもやってのけるプロの強盗。彼はある男の依頼で、宝石専門の貸金庫から貴重なブラック・ダイヤモンドを盗み出す。だがその動きを監視している謎の東洋人が、トニーたちを先回りするように動いていた。さらに「ダイヤを渡せ」という強迫めいた電話と、ダイヤ強奪を依頼した男の死。どうやら盗まれたブラック・ダイヤモンドを入手すべく、複数のグループが暗躍しているらしい。だが肝心のダイヤは、既にトニーの手を放れて故買屋に渡り、さらにそこから裏社会の大ボスの手元に流れてしまった。トニーからダイヤを奪おうとする男たちは、トニーの娘を誘拐してダイヤの取引材料にしようとするのだが……。

 ジェット・リー主演の『ロミオ・マスト・ダイ』や、スティーブン・セガールとDMXの主演映画『DENGEKI/電撃』などを撮っているアンジェイ・バートコウィアク監督の新作。過去2作品の主演俳優を組み替えて、今回の主演はジェット・リーとDMXだ。監督としては勝手を知った間柄の俳優ということもあるのか、ギクシャクしたところを感じさせないスピード感のある映画に仕上がっていると思う。

 話はちょっと粗っぽすぎると思う。そもそもいわく付きのブラック・ダイヤモンドが、なぜ闇市場に出回ってしまったのかもよくわからない。DMX扮するトニーにリー扮するスーを加えた合同チームと、ダイヤを狙う東洋系の犯罪組織と、アメリカのギャングたちという三つ巴の戦いも、アイデアは面白いのにどこか空回りしているように思える。トニー周辺のホームドラマ的なエピソードが分厚いわりには、もうひとりの主役であるスーについてのエピソードが薄っぺらでバランスが悪い。ジェット・リー主演映画だと思って劇場に足を運ぶと、「あれれ?」ということになるかもしれない。

 見せ場は次から次に登場するアクションシーン。ビルの最上階から手だけを使って、ベランダ伝いに下の階に降りていくシーンや、四輪バイクを使ったカーチェイスなどは面白かった。『ロミオ・マスト・ダイ』ではSFXを使ってリーのアクションシーンに手を加えていたのだが、今回はあまりいじくらずにストレートに肉体の動きを見せているようだ。ジェット・リーが最後に戦うボスキャラは、『SPY_N』や『ジェヴォーダンの獣』のマーク・ダカスコ。悪くはないんだけど、このキャラクター自体の設定がやはりかなり薄っぺらなのは気の毒だった。一応リーが演じているスーとの過去の因縁については語られているのだが、それが本当に3秒で語って終ってしまうところがもったいない。

 それにしても、香港時代のジェット・リーが放つ、カリスマ的なオーラが消えてしまったように感じるのは僕だけではあるまい。今回の映画のようなポジションなら、有無を言わさぬ超人的な強さを披露してもよかったと思うけど。

(原題:CRADLE 2 THE GRAVE)

2003年3月下旬公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2003年|1時間45分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.warnerbros.co.jp/

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DVD:ブラック・ダイヤモンド
サントラCD:ブラック・ダイヤモンド |CRADLE 2 THE GRAVE
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