棒たおし!

2003/03/12 TCC試写室
体育祭の棒たおし競技に青春のすべてをぶつける少年たち。
城戸賞受賞シナリオを前田哲監督が映画化。by K. Hattori

 2002年の城戸賞を受賞した松本稔の脚本を、『パコダテ人』の前田哲監督が映画化した青春ドラマ。タイトルからもわかるとおり、これは「棒たおし」をモチーフにしたスポ根ものという体裁になっている。主演は男性アイドルグループLeadの谷内伸也と、FLAMEの金子恭平。他にもLeadとFLAMEのメンバーがあちこちに顔を出しているらしい。もっとも僕は、どちらのグループもよく知らないのだけれど……。

 本格的な受験シーズンを目前に控え、高山次雄は退屈な高校生活を持て余していた。クラスのいじめらっ子が旗竿の上に引っ掛けられたズボンを、ポールをよじ登って取ってやったのも、別にたいした意味があるわけじゃない。だがそれを見ていた同じクラスの久永勇は、突然「相棒! 一緒に体育祭で棒たおしやろうぜ!」といい始める。相棒だなんて冗談じゃない。棒たおしも真っ平ごめんだ。だが勇の勢いと強引さに押されて、結局は次雄も棒たおしに加わることになってしまう……。

 物語としては、棒たおしの企画、練習、そして本番へという流れになっているのだが、映画が描こうとしているのはしの背後にある高校生たちの心情だ。主人公の次雄も、彼を棒たおしに誘う勇も、次雄が好意を寄せているヒロインの小百合も、それぞれが人に言えないような辛い現実を抱えている。次雄の家庭の問題。勇の病気。小百合の問題については噂話として軽く触れられているだけだが、そこにもドロドロとした何かがあることは間違いない。映画はこの3人を軸にして進行していく。

 僕は「棒たおし」という競技を小学校の運動会で1度だけやったことがある。最近はどの学校でも危険であることを理由に、棒たおしや騎馬戦が競技からはずされる傾向にあるようだが、競技の興奮度や見た目の面白さは、危険度と比例関係にあるようにも思える。映画の中では棒たおしの歴史や戦略について基本的な説明が行われていて、これはなかなか面白そうだと思わせるに十分。棒たおしの起源が自由民権運動にあったなんて知らなかったよ……。(ちなみに騎馬戦も自由民権運動が起源だそうですが。)
 
 映画の中には「死ぬとわかっていて人間はなぜ生きるのか」という問いかけが何度か出てくる。これはあまりにも大きな問いだけれど、じつはこの問いがこの映画のテーマともオーバーラップしているのだと思う。この主人公たちは、「棒たおし」になぜかくも夢中になるのか。それによって何かの利益が得られるわけではない。どこかでそれが有利に働くわけでもない。ただ「やりたい」「やらせろ」という勢いだけで、彼らは棒たおしに熱中している。おそらく青春とは、そういうものなのだ。意味なんてなくて結構。後に何も残らなくても上等。今このときに、生きていることを実感できる何かがほしいだけ。こう考えると、映画のほろ苦い結末もひどく納得がいくのだ。

2003年3月21日公開予定 テアトル池袋・他
配給:東京テアトル、パル企画
(2003年|1時間35分|日本)
ホームページ:
http://www006.upp.so-net.ne.jp/pal/bo-taoshi/bo-top.html/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:棒たおし!
関連DVD:前田哲監督
主題歌CD:FLY AWAY(Lead)
関連CD:Lead
関連書籍:伝説の序章―Lead写真集

ホームページ

ホームページへ