キャンディ

2003/04/03 メディアボックス試写室
テリー・サザーンの同名小説を映画化した60年代カルチャームービー。
当時はセンセーショナルだったんでしょうけど……。by K. Hattori

 テリー・サザーンとメイソン・ホッフェンバーグが書いたエロチック・ユーモア小説「キャンディ」を、60年代末に豪華キャストで映画化した作品(製作年には68年説と69年説があるそうで、IMDbは68年説、今回の日本上映のプレスは69年説を採っている)。日本では70年に公開されているが、それは大幅にカットされた1時間44分バージョン(アメリカ版)。今回の上映はノーカット完全版となる2時間4分版だ。原作は角川文庫や富士見ロマン文庫でいつでも手に入ると思っていたら、なんと現在絶版になっているようだ。「O嬢の物語」は古典になっていつでも手に入るのだが、結局のところ「キャンディ」は古典になり切れなかったということか。

 お堅い高校教師(ジョン・アスティン)の箱入り娘キャンディ(エヴァ・オーリン)は、学校に講演に来た有名な詩人(リチャード・バートン)に誘惑されて処女を失いそうになる。だが詩人は泥酔して役立たず。あられもないキャンディの姿に欲情し、彼女に飛びついたのは庭師の青年(リンゴ・スター)だった。この様子を父親と叔父(アスティンの二役)に目撃されたキャンディは、スキャンダルを避けるためニューヨークへ。ところが途中で父親が大怪我をして、偶然逃げ込んだ軍用機の中では堅物の軍人(ウォルター・マッソー)もキャンディにむらむら。ユーヨークでは天才脳外科医(ジェームズ・コバーン)に誘惑され、カメラマンに激写され、せむし男(シャルル・アズナブール)と深い仲になり、警官に追いかけられて逃げ込んだトレーラーでは不思議なグル(マーロン・ブランド)に性秘術の手ほどきを受ける。最終段階を残すのみとなった彼女は、砂漠で聖者に出会う。地下寺院で聖者に抱かれたキャンディだが、白い化粧の下から現れた聖者の顔は……。

 原作者のテリー・サザーンは『博士の異常な愛情』『バーバレラ』『イージー・ライダー』などで有名な脚本家だが、この映画では脚本にノータッチ。かわって脚色を担当したのは、この映画の前年『卒業』でオスカーにノミネートされたバック・ヘンリーだった。撮影はヴィスコンティやフェリーニ作品のジョゼッペ・ロトゥンノ。音楽はデイブ・グルージン。衣装デザインのエンリコ・サバティーニも後にオスカーにノミネートされている。要するにこの映画、監督のクリスチャン・マルカンと主演のエヴァ・オーリン以外は、みんな超一流ぞろいなのだ。それなのに、この映画は思い切りヘナチョコだ。これだけのスタッフとキャストがいても、芯になる監督・主演がダメだとヘナチョコになってしまうということなのか? いやそうではあるまい。この映画はどこをどう観ても、最初からヘナチョコ映画になるべくしてヘナチョコになっているのだ。

 60年代の風俗が見える(俳優やキャストなどの顔ぶれも含めて)という以外に、これといって意味のない映画。カルト映画だね。

(原題:Candy)

2003年夏公開予定 シネマライズ(レイト)
配給:プチグラパブリッシング
(1969年(1968年?)|2時間4分|イタリア、フランス、アメリカ)
ホームページ:
http://www.candy-1969.com/

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DVD:キャンディ
原作:キャンディ
原作洋書:Candy (Terry Southern)
関連書籍:テリー・サザーン
関連書籍:オリンピア・プレス物語

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