NOVO
ノボ

2003/04/30 GAGA試写室
記憶障害の男と若い女の恋を描く異色のラブストーリー。
物語の象徴性が飲み込みにくいように思う。by K. Hattori

 『メメント』や『ウィンタースリーパー』に登場した、コルサコフ症候群という記憶障害がある。言葉や生活習慣などについては問題ないのだが、自分がどこの何者なのか、今まで何をしていたのかをすっかり忘れてしまう。記憶は次々に消えて行き、自分が5分前に何をしていたのかも思い出せない。『NOVO』もそんな記憶障害を持つ男の物語だ。

 とある会社でコピー係をしているグラアムは、記憶障害で自分の過去を次々に忘れてしまう。そんな彼が、派遣社員としてやってきたイレーヌと恋をした。出会ったその日にベッドを共にするふたり。だが翌朝になれば、グラアムはそんなことがあったことすら忘れてしまうのだ。イレーヌは「今この時」だけを生きるグラアムにますます惹かれていく。だが彼には、彼自身すら忘れている過去がある。グラアムとはいったい何者なのか? 彼の過去にはどんな秘密が隠されているのか?

 監督は『TOKYO EYES』のジャン=ピエール・リモザン。主人公のグラアムを『オープン・ユア・アイズ』や『パズル』のエドゥアルド・ノリエガが演じ、ヒロインのイレーヌをアナ・ムグラリスが演じている。映画の中では主人公の記憶障害そのものがミステリーの種になっているわけではなく、ひとりの人間の「過去」と「現在」と「未来」がテーマになっている。グラアムには「過去」がない。はたして人は、過去のない人間と付き合うことができるのか? グラアムと同じ過去を共有していた人たちは、自分たちを忘れてしまったグラアムをどう見ているのか?

 グラアムとイレーヌが互いの愛を深めていくエピソードは見ていて楽しいのだが、それ以外の周辺エピソードに秘められた象徴性が僕にはいまひとつわからない。例えば女性のアソコに歯を入れるという行為に、いったいどんな意味があるのか。イレーヌの過去の男が突然シャワーに飛び込んでくるというシーンが、いったいどんな意味を持ち合わせているのか。そもそも映画冒頭に出てくる女性上司との情事や、グラアムを常に監視している男の存在も、なぜこんな関係がありえるのかよくわからない。

 主人公が記憶を失った原因が映画の終盤で明らかにされた時点で、この映画が一種のファンタジー映画であることが観客にわかる。主人公の記憶障害は医学的には「コルサコフ症候群」なのかもしれないが、現実にはこれはどうでもいいことなのだ。この映画はグラアムという異能の男が、自分自身の過去と現在と未来を探して旅をする物語。ひとりの英雄が旅の途中でさまざまな障害に出会い、最後は故郷に帰還するという「オデュッセイア」のような物語なのだ。

 イレーヌを演じたアナ・ムグラリスはこれが本邦初登場だと思うが、整った顔立ちの美形女優で、今回はヌードも披露。今後の活躍が期待できそうだ。僕はすっかり気に入ってしまった。

(原題:NOVO)

2003年6月公開予定 シネセゾン渋谷
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガGシネマ風、アニープラネット
(2002年|1時間38分|フランス)
ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/novo/

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DVD:NOVO
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