17才

2003/05/06 映画美学校第2試写室
木下ほうかの初監督作は、女子高生を主人公にした青春映画。
主演女優たちの魅力が映画の魅力の大部分だろう。by K. Hattori

 日本映画界の名バイプレイヤー、木下ほうかの初監督作品。主人公の女子高生アコ役に三輪明日美。親友リョウを演じる猪俣ユキは、この映画の企画・原案・脚本も担当している。共演に菊地百合子、松田龍平、徳井優など。監督の木下ほうかも面白い役で出演している。デジタルビデオで撮影された1時間12分の作品。途中で絵づらが妙に薄っぺらになるシーンもあるが、自主制作のような超低予算映画では、映像もそのまま目の前にあるものを撮りっ放しにならざるを得ないのだろう。しかしこのスッピンの映像が、手を加えていない女子高生たちの生々しい日常をリアルに切り取る効果も生み出している。非日常的な事件がほとんど起きない淡々としたドラマには、むしろこんな映像が似合うのかもしれない。

 夜はキャバクラでバイトし、昼間は学校で寝てばかりいる女子高生アコ。留年して1歳年上の同級生リョウはクラスの中でちょっと浮いていたが、ある日を境にアコと言葉を交わし親友になる。隣のクラスのヒトミもアコ以外には友達がいないらしく、ちょくちょくアコの教室にやってくる。物語はこの3人の関わりを中心に進行していく。

 映画の中には女子高生たちの家庭生活がまったく描かれない。この映画の中では「家族」というものがまったく力を失っている。映画の中に登場する唯一の親子も、家庭は完全に崩壊しているようだ。ヒトミはどうやらマンションで恋人と同棲しているようだが、アコやリョウはどうなんだろう。少なくともアコは家族と同居しているはず。それなのに、映画にはまったく家族の姿が現れない。ヒトミが自殺未遂を起こそうが、リョウの身に大きな事件が起きようが、そこに家族の姿はない。

 「家族がいなくても友達がいるからいい!」という映画なら、こうした描き方も十分に納得ができる。でもこの映画に登場する友達との関係は、家族関係に匹敵するほどの永続性や確かさを持ってはいない。むしろこの作品のテーマは、友情の不確かさやはかなさなのだ。自分では親友だと思っていても、本当は相手のことなんて何もわかっていない。相手が自分のことを理解してくれていると思っても、それは錯覚なのかもしれない。

 その場その場のふわふわとした人間関係の中で、懸命に自分の居場所を探そうとする女子高生たち。なんだかひどく寂しい世界にも思えてしまうのだが、この映画ではそれがあまりネガティブなものとしては描かれていない。むしろヒロインたちが自分の力で第一歩を踏み出すにあたって、一度は孤独を味わうことが必要なのではないかと言っているようにも思う。豊かで何の不自由もない時代にあって、こうした「孤独の体験」こそが自己確立に必要な通過儀礼になっているのかな。こうした肯定的な評価が可能なのも、この映画のヒロインたちがいつも毅然とした姿を見せているからだろう。「まぁがんばれよ」と小さな声援を贈りたくなる作品だ。

2003年6月21日公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給・宣伝:スローラーナー
(2001年|1時間12分|日本)
ホームページ:
http://www.bc.wakwak.com/~actressclub/17age/

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