マトリックス
リローデッド

2003/05/19 ワーナー試写室
救世主ネオの苦悩と新たな戦いを描く『マトリックス』シリーズ2作目。
神話的なスケールに広がったマトリックス・ワールド。by K. Hattori

 『マトリックス』3部作の第2章にあたる物語。そもそもこのシリーズは、1作目だけで物語が一度完結している。機械に支配されて「マトリックス」というヴァーチャル・リアリティの中で暮らしていた人間たちが、抑圧的な支配を脱して機械に反撃する。そのキーパーソンが、救世主となるネオだ。1作目のラストシーンでネオは自分が救世主であることを自覚し、機械たちに対して宣戦布告した。主人公が迷いや悩みを克服して一種のスーパーマンになってしまったのだから、ここで物語は終わっても構わないのだ。今回作られた2作目は、1作目で物語のスパイスとして散りばめられていた神話風のキーワードを、ドラマの前面に押し出しているのが特徴だ。

 物語のベースになっているのは、紀元1〜3世紀のキリスト教異端・グノーシス派の神話だ。我々の目の前にある物質世界は、悪の神デミウルゴスによって作られた。人間はデミウルゴスが作り上げた虚偽の世界の中で、真実から遠ざけられて暮らしている。覚醒して真実を知った者たちは、デミウルゴスが作った物質世界を抜け出して真実に到達することができる……。『マトリックス』の作者たちがグノーシス神話を意識していることは、今回の映画でホバークラフトの名前として「グノーシス号」が登場することからも明らかだ。映画は第3作目で人間とコンピュータの最終決戦を描くことになりそうだが、それは「ヨハネの黙示録」に由来する最終戦争ではなく、グノーシス型の救済神話になるだろう。

 今回の映画には2つのサスペンスが用意されている。ひとつは『アニマトリックス』の中の短編「ファイナル・フライト・オブ・オシリス」で描かれている、センティネルによるザイオン直接攻撃という脅威。もうひとつはネオの夢に出てくるトリニティーの死だ。ネオの夢は、戦いの中の不安が生み出す悪夢ではない。ネオの特殊な能力が、未来の出来事を「予知夢」という形で明らかにしているのだ。トリニティーは死ぬ。この未来は動かせない。だがネオはトリニティーを救いたい。どうすればいいのか?

 新能力を身に着けてさらに強力になったエージェント・スミスや、謎の女パーセフォニー、剃刀を武器に変幻自在のアクションを見せるザ・ツインズなど、立ちふさがる敵はさらに強力になった。予告編でも流れている数々のアクションシーンは、もはや格闘シーンの極限にまで達していると言えるかもしれない。

 しかし僕は今回、こうしたアクションシーンにあまり夢中になれなかった。1作目で小さくまとまりかけた『マトリックス』の世界観が、『アニマトリックス』や今回の映画で一気に広がったことの方に衝撃を受けたのだ。物語が途中でぶった切られている『マトリックス リローデッド』は、次の『レボリューションズ』と合わせて評価すべき作品だと思う。今は興奮を抑えつつ、完結編の登場を待つしかない。

(原題:THE MATRIX: RELOADED)

2003年6月7日公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2003年|2時間18分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.thematrix.com/

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