夢の中に君がいる

2003/06/12 東京日仏学院エスパスイマージュ
ひとりのベテラン女優と家族や友人たちをめぐるコメディ。
ところで「ペリカンの体位」とはどんなもの? by K. Hattori

 『カンヌ映画祭殺人事件』や『ディディエ』に出演している人気女優、シャンタル・ロビーの映画監督デビュー作。彼女は監督のほかに、脚本と主演を兼ねている。

 42歳のベテラン女優オディールは、17歳の娘マリーとパリ市内のアパートで暮らしている。現在独身でボーイフレンドなし。周囲の友人たちが、浮気だ不倫だ新しい恋だと騒ぐ中、オディールの心配事はもっぱら娘マリーの帰宅が遅いこと。娘は「もう大人よ!」と自分の世界に母が入ってくることを嫌がるのだが、当の母親はまだまだ子離れできないでいる面もあるのだ。そんなある日のこと、娘マリーが恋人ギヨームと同棲するため家を出ると言い出すのだが……。

 映画冒頭にいきなりジャン=ユーグ・アングラードが出てきて、主人公のオディールと激しい言葉を交わす。じつはこれが芝居の練習中という設定で、アングラードは今回ゲストスターとして出演しているのだ。映画は全体にコメディタッチ。美人でしっかりものに見えるオディールのズッコケ振りを、シャンタル・ロビーが変幻自在に演じているのが面白い。周囲の人物にもひとりとして悪人が登場しないのだが、それぞれの個性と個性がぶつかり合って、さまざまなトラブルが発生する様子も楽しく見られる。特にアパート管理人とのやり取りなどは最高。

 映画は後半になって、ヒロインのオディールと遊園地の経営者をしているカデールという男の恋愛模様になってくる。カデールはオディールの初恋の人に似た不良タイプ。華やかな芸能界で暮らしているヒロインと、遊園地の経営者といういささかアンバランスな対比。ちなみに字幕ではこの遊園地が「縁日」と訳されていて、カデールや家族は遊具から少しはなれた場所に停めてあるトレーラーハウスで暮らしている。ここにある遊園地はディズニーランドや豊島園のような常設の遊園地ではなく、大きな広場などを借りて遊具を設置してある簡易遊園地ということなのかもしれない。(それでも3回転ループのジェットコースターがあったりするようなんだけど。)
 
 全体にひとつのテーマがあるわけではなく、主人公オディールと周辺の人物たちの関わりを通して、人間関係の中にあるユーモラスな面を引っ張り出そうとする作品だ。ユーモアの中には辛辣で苦いものもある。ロシー・デパルマ演じるヒロインの友達が、出会い系サイトで知り合った男性をまんまと別の女性に奪われてしまうエピソードなどはそのひとつ。ジャン=ユーグ・アングラードも最後のほうで、得体の知れない男の凄味のようなものをちょっと匂わせている。
 
 物語がどうのこうの、テーマがどうのこうのと言う以前に、特定のシチュエーションの中で俳優たちがのびのびと演技している様子が見られて楽しい映画。有名俳優も無名俳優も、ベテランも新人も、みんなが集まってひとつのハッピーな世界を作り上げている。アニメの合成も愉快。

(原題:Laisse tes mains sur mes hanches)

6月21日上映予定 第11回フランス映画祭横浜2003
配給:未定
(2003年|1時間45分|フランス)
ホームページ:
http://www.unifrance.org/

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