閉ざされた森

2003/08/27 ソニー・ピクチャーズ試写室
パナマの森林地帯で訓練中のアメリカ軍レンジャー部隊が行方不明に。
ジョン・トラボルタ主演のミステリーだが、話がややこしすぎる。by K. Hattori

 パナマの米軍基地から演習に出たレンジャー部隊の兵士7人が、嵐の森の中で連絡を断った。救出に向かったヘリが目撃したのは、負傷する仲間を背負って森の中を逃げ回るひとりの兵士のみ。彼は後ろから追ってくる別の兵士と銃撃戦をしていた。結局ヘリが救出できたのは逃げていた2人だけ。ひとりは救出された兵士に射殺されており、残る4人は行方不明のままだった。いったい森の中で何が起きたのか? 捜査担当のジュリー・オズボーン大尉は救出されたダンバーという兵士を尋問するが、彼はまったく口を割ろうとしない。基地の統括責任者であるスタイルズ大佐は、レンジャー部隊出身で軍隊の内部事情にも詳しい麻薬捜査官トム・ハーディに捜査協力を求める。

 軍隊内部で起きた殺人事件を捜査するミステリー映画で、主人公は外部から捜査協力のため基地にやってきたトム・ハーディという男。演じているのはジョン・トラボルタだ。相棒役の生真面目なオズボーン大尉を、『グラディエーター』に出演していたコニー・ニールセンが好演している。行方不明中の鬼軍曹ネイサン・ウエストを演じるのは、サミュエル・L・ジャクソン。監督は『ダイ・ハード』シリーズのジョン・マクティアナンだ。

 謎めいた殺人事件について複数の証言があり、それぞれまったく異なるシチュエーションを次々に映像化して提示するという手法は、黒澤明の『羅生門』にあったもの。この映画は最初からそれを十分に理解しているようで、映画のオープニングにはラヴェルの「ボレロ」が流される。これは『羅生門』で流れるボレロ(作曲は早坂文雄)に敬意を払ってのことのように思える。殺人事件の現場が深い森の中というのも『羅生門』と同じ。土砂降りの雨という描写も『羅生門』の引用かもしれない。

 ただでさえややこしい殺人事件の様子が何度も設定を変えて繰り返され、観ているとすっかり頭が混乱してしまう。混乱したまま最後の謎解きやドンデン返しをやられても、なおさら頭が混乱してしまって、まったくカタルシスが味わえない。映画のエピローグにあたる部分がやけに長く感じるのも、一瞬にしてすべての謎が解けて「なるほど!」と思う興奮が味わえないからに違いない。『羅生門』では登場人物が3人だったが、この映画では事件の現場にいた人間が7人もいるのだ。しかもそのすべてがレンジャー隊員だから、全員がそっくり同じ服を着ている。人物の見分けが付きにくい。名前も覚えにくい。隊長のサミュエル・L・ジャクソン以外にも、レンジャー隊員の中に有名な俳優を2,3人は入れておくなど、何かしら目印になる要素を増やしてほしかった。ビデオやDVDで2回観れば真相がわかりそうだけれど……。

 主役であるトラボルタより、彼の脇で受けの芝居に存在感を発揮したコニー・ニールセンに好感が持てる。サミュエル・L・ジャクソンは、今回ゲストみたいなものでしょう。

9月13日公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
宣伝・問い合わせ:メディアボックス
(2003年|1時間38分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.tozasareta.com/

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