バリスティック

2003/09/03 メディアボックス試写室
ルーシー・リューのアクション全開映画だが物語がいい加減すぎる。
アクションシーンの良さがこれでは生きてこない。by K. Hattori

 アントニオ・バンデラスとルーシー・リューが共演したハード・アクション映画。監督はタイのバンコク出身のカオスで、これがハリウッドでのデビュー作。出演者こそメジャー作品にも顔を出すスター俳優たちだが、そこから脇に目をやると名前と顔が一致しない無名のキャスティング。『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』のダース・モールや、『スリーピー・ホロウ』の首なし騎士のスタントなどで勇名を馳せたレイ・パークが、今回はちゃんと顔を出して出演しているのが見どころとか、まぁそういうレベルの配役なのだ。

 国防諜報局DIAのダレル長官の一人息子が、厳重な警備体制も虚しく何者かによって誘拐された。犯人はもとDIAの工作員で、幼い頃から徹底した殺人技術を仕込まれているシーバーという女だ。7年前に目の前で妻を爆死させられて以来、酒びたりになっている元FBI捜査官エクスは、元同僚からこの事件の捜査を依頼される。見返りは死んだはずの妻ヴィンの居所だった。エクスは愛する妻を取り戻すため、人間兵器シーバーの行方を追う。だがじつはこの事件には裏があった。ダレルはドイツで盗み出した小型兵器を、息子の体内に移植して国内に持ち込んでいたのだ……。

 アクションシーンの面白さはさておき、この映画の致命的な欠点はわけのわからないストーリーにある。ストーリーが難解で理解に苦しむわけではなく、登場人物たちの行動やその動機付けが、いちいちすべて腑に落ちないのだ。例えば主人公と妻は互いに相手が死んだと思っているわけだけれど、数日や数ヶ月ならともかく、7年ものあいだ事実を欺き通すことができるのはなぜなのか。この夫婦には共通の友人や付き合いのあった親戚などが、まるっきり存在しなかったのだろうか。ガントはなぜ7年前の時点で、偽装の死を演出するなどという面倒くさいことをしたのか。本当にエクスを殺してしまうほうがはるかに簡単だったろうに。またシーバーが生み落とした赤ん坊の父親は誰なのかがよくわからず、彼女がガントを恨む理由もわからない。それに彼女はなぜ小型兵器の存在について知り得たのだろうか。

 こうした不合理に目をつぶることができるなら、この映画はなかなか痛快なアクション映画だと思う。特にショッピングセンターでシーバーが襲われるシーンは最高。まさにタイトル通り(Ballisticは「弾道」という意味)、弾数にモノをいわせた大銃撃戦が展開する。体のあちこちに隠し持った銃器で取り囲んだ特殊部隊や警官隊に応戦し、さらに敵の武器を奪って戦い続けるエネルギー。ルーシー・リューのアクションを満喫したいなら、『チャーリーズ・エンジェル』よりこの映画のほうが上だろう。最後に用意されているレイ・パークとの格闘シーンも見応えがある。こうして出演者たちがアクションをがんばっているだけに、お話のお粗末さが悔やまれる。

(原題:Ballistic: Ecks vs. Sever)

10月4日公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2002年|1時間31分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.ballistic.jp/

DVD:バリスティック
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サントラCD:バリスティック(スコア)
サントラCD:Ballistic: Ecks vs. Sever
輸入ビデオ:Ballistic: Ecks vs. Sever
関連DVD:アントニオ・バンデラス
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