オーメン

2003/11/07 オーチャードホール
偶然出会った謎めいた老婆のつぶやきが次々に現実に。
製作・脚本はダニー&オキサイド・パン兄弟。by K. Hattori


 『レイン』や『the EYE【アイ】』で注目されているダニー&オキサイド・パン監督が、製作・脚本・編集を担当したタイ映画。監督はこれがデビュー作のタマラック・カムットタマノート。主人公を演じる3人の少年たちは、タイの人気アイドルグループらしい。タイトルの『オーメン』とは予言や予兆のこと。同名の有名オカルト映画とは無関係だ。

 同じデザイン事務所で働くビーム、ダン、ビッグの3人は、時に喧嘩もするけど仲のいい親友同士。会社の帰りに夜道で老婆をはねそうになったダンは、車を道路脇の気にぶつけてしまい、気が付くと不気味な老婆の家で介抱されていた。同じ頃、道路で信号待ちをしていたビッグは、物売りをしている不思議な少年に出会う。それとほぼ同時刻、やはり信号待ちで車を停車させていたビームは、車のボンネットに突然植木鉢が落ちてきたことをきっかけに、オームという少女と出会って親しくなる。三者三様の新しい出会い。だがこの出会いは、ほんの予兆に過ぎなかった……。

 ダンが知り合った老婆がブツブツと謎めいた言葉を話し、それが数日以内におとずれる不吉で危険な事件の予言になっているというのが主たる筋立て。しかしこの脚本には強引で無理なところが多い。「なぜそこでそう考えたのか」「なぜそこでそう行動するのか」「なぜそこで行動を起こさないのか」など、観客が当然考えるであろう疑問にまったく答えられない脚本の貧弱さを、音響や場面転換が生み出すショック効果でごまかそうとしているのは見え見えだ。

 映画のクライマックスにあるネタばらしから逆算するなら、この映画は序盤から中盤までたくさんの「なぜ?」という小さな疑問を積み上げ、それを最後の最後になって瞬間的に氷解させなければならない。謎に回答が得られたときの「なるほどそうだったのか!」というカタルシスが、安堵感と共に感動を生み出すのだ。だがこの映画は「なぜ?」という疑問を積み上げる前に、土台がぐらぐら揺れ動いているのだからお話にならない。老婆の家にはなぜ電気が通っていないのか。オームはなぜわざわざ工事現場のど真ん中に喫茶店を開かねばならないのか。工事なんて数日で終わるんだから、その程度のことでいちいち泣くなよなぁ〜。

 ミステリーの回答に至っては「そりゃ、なんだ?」という呆れたもの。しかし映画の随所にモノクロ映像を挿入し、それが主人公3人組の子供時代だと思いこませたのはアイデア賞だった。確かに3人の過去の話ではあるけれど、まさか生まれるより前の過去だったとは……。それにしても仏教国タイでは、このオチに観客が納得して感動の涙を流すんだろうか。ちょっと信じられない。オキサイド・パンは『タイムリセット/運命からの逃走』でも似たようなネタを使っていたけれど、あまりこればかりを使うのはズルイと思う。一種の手抜きじゃないのかな。

(原題:OMEN)

第16回東京国際映画祭 コンペティション
配給:未定
(2003年|1時間28分|フランス)
ホームページ:
http://www.tiff-jp.net/

DVD:オーメン
関連DVD:タマラック・カムットタマノート監督
関連DVD:ダニー&オキサイト・パン監督

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