ドラッグストア・ガール

2003/12/05 松竹試写室
さびれた地方商店街がヒロインのおかげで町おこし。
田中麗奈の魅力で物語りの半分ができている。by K. Hattori


 1998年に『てなもんや商社』でデビューして以来、なんだかんだで年に1本ぐらいのペースで映画を撮っている本木克英監督の最新作。とはいえ過去3作は『釣りバカ日誌』という松竹の看板シリーズ映画だったから、本木監督としては自分の思うように素材を料理するチャンスがなかったと思う。(その点では95年に『時の輝き』でデビューした後、『サラリーマン専科』という傍系シリーズを撮っていた朝原雄三監督の方が、『釣りバカ14』で自分の強みを発揮できていたと思う。)今回は本木監督にとって久々のオリジナル作品。しかも脚本は宮藤官九郎で、主演は田中麗奈という、当代の売れっ子が揃った爆笑コメディになっている。

 都内の薬科大学に通いながらラクロス部で汗を流す大林恵子は、同棲相手のが浮気して部屋を飛び出した。あてもなく電車でたどり着いた先は、東京郊外のさびれた駅前商店街。町内で唯一元気がいいのは、商店街の目と鼻の先にできる大型のドラッグストアだ。恵子は明かりに引き寄せられる虫のようにフラフラとその店に入ると、そのままバイトを始めてしまう。同じころ商店街の中年店主たちは、商売敵となるドラッグストアの営業を妨害すべくテロ計画を練っていた。だが決行の朝、メンバーのひとりが恵子に一目惚れ。「裏切り者め」と毒づいた仲間たちだが、彼らも次々と恵子の魅力のとりこになってしまう。やがて中年グループは恵子とより親しくなろうと、ラクロスのチームを作って自主練習を始めるのだが……。

 映画はじつに快調。特に立て板に水の会話テンポで勢いよくドラマが進行する、映画前半の面白さは格別だ。物語の中では主人公の大林恵子が一番普通で、その周囲に個性的なキャラクターがずらり勢揃いして次々に事件が起きるという構成。ただしこのヒロインも、自分の周囲にいるのが変人ばかりだという自覚がまったくないという意味では、それなりに奇妙な人でもあるのだが……。

 主演の田中麗奈以外はほとんどがオジサンとオバサンばかりという、かなりいびつなキャスティングになっている。演じているのは映画やドラマで知られる、大ベテランの役者たちなのだが、これがこの映画の中で一皮も二皮もむけてはじけている。一番笑わせてくれたのは、ドラッグストアのバツイチ薬剤師を演じた余貴美子。あまりにも役作りが激しすぎて、最初は誰だかさっぱりわからなかったぞ。

 椅子からズッコケそうになるほど面白い場面がいくつもある映画なのだが、ラクロスの日米対抗戦が始まる終盤でドラマが失速してしまうのは残念。薬剤師試験のための勉強はどうした。約束のデートはどうなった。そんな余計なことが気になるのは、映画の終盤に勢いがないからかもしれない。

 それにしても、田中麗奈は徹底して体育会系のオンナが似合う。デビュー作はボート部だったし、駅伝の映画もあったし……。

2004年2月7日公開予定 全国ロードショー
配給:松竹
(2003年|1時間45分|日本)
関連ホームページ:
http://www.dsg-movie.jp/

DVD:ドラッグストア・ガール
エンディングテーマ:ラジオ・スターの悲劇(バグルズ)
関連DVD:本木克英監督
関連DVD:田中麗奈
関連DVD:宮藤官九郎
関連書籍:女子プレーヤーのためのはじめてのラクロス

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