タイムライン

2003/12/09 スペースFS汐留
原作はマイケル・クライトン。監督はリチャード・ドナー。
この主人公たち、自業自得なんじゃないの? by K. Hattori


 マイケル・クライトンの同名小説をリチャード・ドナーが映画化したアドベンチャー映画だが、なぜか浮ついてチャラチャラした映画になってしまっている。物語の最初から最後まで一通りの見せ場が用意されていて、筋立てに複線もあるしオチもある。ところが映画として観ると、これがまるでつまらない。現代人が中世のヨーロッパに迷い込む話なら、マーティン・ローレンス主演の『ブラック・ナイト』の方がずっと面白かったと思うけどなぁ。逆に中世の騎士が現代にやってくる『おかしなおかしな訪問者』(アメリカで『マイ・ラブリー・フィアンセ』として再映画化)や『ビジター』という映画もあるぞ。

 フランスで14世紀の修道院を発掘していた考古学者ジョンストン教授が、スポンサー企業ITC社が作ったタイムマシンで14世紀に行ったまま戻れなくなってしまう。教授の息子クリスと助手たちは、教授を救出するため自分たちも14世紀に乗り込むことにする。ところが中世に到着した途端に騎士の一群に襲われて犠牲者は出る。タイムマシンは破壊されて現代に戻れなくなる。捕らわれの身の教授は、歴史の上では負けるはずの英軍に協力して新兵器を作らされている始末。はたして彼らは歴史を変えることなく、無事に現代に戻ることができるのだろうか……。

 物語の構造はクライトン原作の大ヒット映画『ジュラシック・パーク』と同じだ。大企業が開発テクノロジーによって、科学者たちが異世界に放り込まれて命からがら逃げ回る。『タイムライン』では恐竜が野蛮な騎士になっている。ただしここで問題なのは、普通の人は「本物の恐竜を見てみたいなぁ」と思うことはあっても、「中世のヨーロッパに行ってみたいなぁ」とは思わないことだろう。あるいはアメリカ人にはそうした憧れがあるのかもしれないが、日本人の僕はそうした願望が皆無だなぁ……。

 映画では主人公たちが過去に行く理由として「教授の救出」というきっかけを作っているのだが、このために何人の人間が犠牲になっているのやら……。一番気の毒なのは、本人は嫌がっていたのに「お前が必要だ」と無理矢理中世に連れて行かれて、いきなり殺されてしまったフランソワ君。この人が死んでも結局誰も困っていないのだから、結局彼はただ殺されるためだけに中世まで無理矢理連れて行かれたわけね。あ〜あ。

 この映画は登場人物の造形にいろいろな個性を付加しようとして、物語の流れを遮っている部分があまりにも多いのではないだろうか。人間は多面的な存在だから、勇気があるように見えて臆病だったり、知的に見えて愚かだったりすることもあるだろう。でも2時間足らずの映画で登場人物全員がそれをやり始めると、話があちらこちらに右往左往してしまうだけなのだ。キャラクターを単純化してB級の活劇に徹した方が、この映画は今よりずっと面白くなったはずだ。

(原題:Timeline)

1月17日公開予定 日劇1他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
宣伝:メイジャー、ギャガ宣伝ウエストグループ
(2003年|1時間56分|アメリカ)
関連ホームページ:
http://www.timeline-jp.net/

DVD:タイムライン
サントラCD:タイムライン |Timeline
原作:タイムライン(マイクル・クライトン)
原作洋書:Timeline (Michael Crichton)
関連DVD:リチャード・ドナー監督
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