愛にかける橋

2004/02/04 映画美学校第2試写室
第二次大戦直前に恋人の待つ中国に渡ったオーストリア女性の実話。
話は面白いが脚本の構成には大いに疑問がある。by K. Hattori


 第二次大戦直前のオーストリアに警察学校の留学生として派遣されていた中国人青年マー・ロンユン(馬龍雲)は、教官の娘ファニーと親しくなり互いに深く愛し合うようになる。だがふたりの交際にファニーの家族は大反対。やがて政情があわただしくなりロンユンは中国に戻ってしまうが、ファニーは1年後に彼を追って単身上海へ。「4年か5年したら必ず顔を見に戻る」と約束して故国を飛び出したファニーは、第二次大戦、中華革命、文化大革命などの時代に翻弄されて、ついに50数年間を中国で過ごすことになる……。

 文化と国境を越えて愛を貫いた女性の恋愛大河ドラマだが、これは実話をもとにしているのだという。もともとモデルになった女性をテレビ番組が取材したドキュメンタリーが作られ、それを見た女性プロデューサーで脚本家のワン・チーピンが、3年がかりで脚本を書いたのだとか。監督は女性監督のフー・メイ。主人公ファニーを演じたのはオーストリア人女優のニーナ・プロル。ロンユン役は『北京バイオリン』のワン・チーウェン。

 物語はロンユンとファニーの出会いから始まり、いきなり現代のオーストリアに飛ぶ。ファニーの親友だったアニーの孫娘が、中国までファニーの行方を探しに来て彼女からいろいろな話を聞くというのがこの映画の大まかな構成だ。しかしこの構成に、どんな意味があるのか僕にはまったく理解できなかった。もしこうした構成を取るのなら、最初から「ファニー探し」というミステリーを映画の前提に掲げて、「ファニーはなぜ中国に渡ったのか」「なぜ連絡が取れなくなったのか」「彼女は今何をしているのか」などを映画の前半でたっぷり描いた方がよかったと思う。ここで現代っ子であるアニーの孫娘は、西欧文明国から未開で封建的な中国に渡った女性の「不幸な半生」を想像する。しかし実際に出会ったファニーの話したことは、それとはまったく違っていた……という構成にした方が、映画はドラマチックになるような気がする。

 少なくとも完成した映画が、世代の違う女性の出会いと回想形式になる必然性はどこにもない。あるいは当初のプランではこの回想形式に意味があったものの、3年かけて脚本をいじくり回しているうちにヘンテコなことになってしまった可能性もある。いずれにせよこれは中途半端だろう。

 中途半端と言えば劇中で使われている「オーストリアの言葉(ドイツ語)」が、すべて英語で代用されていたのも不思議。国際市場を意識してのことらしいが、どうせ中国語は吹き替えか字幕になるのだから、ドイツ語もそのままドイツ語にしてほしかった。ファニーが「私たちはいつもドイツ語で会話していたわ」と証言しても、その直後の会話シーンがいきなり英語……。これはちょっとなぁ……。

 物語の時間的スケールに比べて、空間的なスケールが出ていないのも気になる。これもちょっと工夫不足だろう。

(英題:On the Other Side of the Bridge)

4月26日〜6月13日「中国映画の全貌2004」 三百人劇場
配給:ワコー 問い合わせ:グアパ・グアポ
2002年|1時間58分|中国、オーストリア|カラー|ヴィスタビジョン
関連ホームページ:
http://www.

DVD:愛にかける橋
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