聖闘士星矢
天界編・序奏 〜overture〜

2004/02/10 東映第1試写室
なんで今さら作られるのかよくわからない「聖闘士星矢」の劇場新作。
次のシリーズに向けた序章ということもありドラマ不足。by K. Hattori


 20年近く前に全盛時代の少年ジャンプに連載されていた人気漫画「聖闘士星矢」の、劇場版オリジナル新作アニメ。原作の連載が1986年から。テレビアニメが86年から89年まで。劇場版が87年から89年までに4本作られているというから、新作劇場アニメは実に15年ぶりの登場ということになる。ただし02年11月からはスカパーでオリジナルアニメ「聖闘士星矢/冥王・ハーデス十二宮編」が放送され、昨年にはそれがDVD化されてかなりの売り上げとなったらしい。おそらくそれに気をよくした人たちが、「これはいける!」ということで今回の劇場版を作ったのでしょう。

 今回の映画は「冥王・ハーデス十二宮編」の続編にあたる内容のようだが、タイトルに『天界編・序奏』とあるように、新たな戦いのステージを作っていく下準備のエピソードになっているようだ。神々に戦いを挑んだ星矢を葬るため、天界から地球に送り込まれた刺客たち。だが傷ついた星矢を守るため、アテナは女神としての権能を姉アルテミスに引き継ぎ姿を消す。意識を取り戻した星矢は再びアテナを守るため、禁断の聖域へと向かう。地上を守るため自らの命を削るアテナを救うため、星矢は失われた小宇宙(コスモ)のエネルギーを取り戻すことができるのか……。

 非力な主人公がある崇高な目的のために旅をすると、その行く手に次々と強敵が現れて主人公と戦う。戦いを通して主人公は少しずつ力を蓄え、その意識も純粋さを増して研ぎ澄まされていく。これは少年ジャンプ的な対決ドラマの定型を、ものの見事になぞっている。しかしこの映画はまだ「序奏」ということもあり、対決ドラマの醍醐味や面白さがほとんど味わえないという矛盾も持っている。戦って勝ち上がり、ステージをひとつずつ上昇していく主人公の成長ぶりが、この映画ではまだ描かれていないのだ。ここで描かれているのは、戦いで傷つき力を失っていた星矢が、アテナを救うという使命のために再び聖闘士としての自覚と力を取り戻すまでのプロセスだ。

 さすがに「星矢復活」だけでは物語が弱いと思ったのか、映画では白銀聖闘士(シルバーセイント)の魔鈴(マリン)と弟のエピソードが付け加えられていたりする。どちらかというと、こちらの方がドラマの作りは面白い。いっそのことこちらをメインにして、魔鈴の視点から星矢たち聖闘士の復活を描いた方が面白かったのではないだろうか。映画では星矢のエピソードがあまりにも単純すぎて面白味がまったくない。星矢と沙織(アテナ)が、物語の中でほとんどからむことがないのだからこれも当然だろう。さほど長い映画ではないのだが、星矢を中心に物語を運べばドラマはスカスカになってしまう。

 星矢が聖闘士の聖衣(クロス)を身につけないというのも、なんだか物足りないなぁ。最後は聖衣を身に付けて、かっこよくポーズを決めて欲しかったんですが……。

2月14日公開予定 新宿文化シネマ他・全国洋画系
配給:東映
2003年|1時間23分|日本|カラー
関連ホームページ:
http://www.toei-anim.co.jp/movie/2004_seiya/

DVD:聖闘士星矢/天界編・序奏
原作:聖闘士星矢(車田正美)
関連DVD:聖闘士星矢
関連CD:聖闘士星矢

ホームページ

ホームページへ