テディベアのルドヴィック

2004/02/19 映画美学校第2試写室
テディベアを使ったカナダの人形アニメーション。
春夏秋冬4つの短編をまとめて上映。by K. Hattori


 世界中で愛されているクマのぬいぐるみ、テディベアを主人公にした人形アニメシリーズ。1998年に第1作目「雪の贈り物」が製作され、それが好評だったことから「ワニのいる庭」「おじいちゃんの家」「空に浮かぶ魔法」がほぼ年に1本のペースで作られている。原題に『For Seasons』とあるように、これらの短編はそれぞれが冬から春・夏・秋の季節を背景にした物語になっている。監督はカナダのアニメーション作家コ・ホードマン。カナダの国立映画制作庁を拠点に活動しているホードマンは日本でも知る人ぞ知る存在らしく、作品のDVDも発売されているし、芭蕉をモチーフにした連句アニメーション『冬の日』にも参加しているという。

 テディベアのルドヴィックはある雪の日、家の庭に落ちている人形を拾う。ヒザが破れた痛々しい姿の人形を見て、ルドヴィックはお母さんの毛糸を使って傷口を修理。その瞬間に動き出した人形は、友だちのいないルドヴィックにとって唯一の親友になる。ケンカをしたり、仲直りをしたりで友情を深めていくルドヴィックと人形だったが、ある日その人形の本当の持ち主が現れて……。(「雪の贈り物」)

 映画はどれも主人公ルドヴィックの一人称。ささやくようにしゃべるルドヴィックの控え目な声が、物語にとてもマッチしているように思う。ただしこれ、観ていると眠くなります。僕は「雪の贈り物」を観て大いに感動し、最後はついホロリと涙ぐみさえしたほどなのに、次の「ワニのいる庭」ではウトウトし始めてしまった。気が付いたらもうルドヴィック君は凧上げをしてました(「空に浮かぶ魔法」)。あれまぁ、わずか48分程度が我慢できないとは困ったもんです。

 映画に登場するテディベアは、中にワラが詰まったクマのぬいぐるみということになっているが、実際には鉛で作ったワイヤの骨格をフォームラバーで包み込み、その表面にぬいぐるみ風の素材を縫いつけたものだという。テディベアはぬいぐるみの人形なのに、その人形が人形を拾ってかわいがったり、紙細工の動物たちと戯れたりする不思議。じつは映画を観ている時、人形が動き出した時や紙細工の動物が動いた時にちょっとした驚きがある。それはこの映画を観ている僕の中で、ルドヴィックやその家族のテディベアたちが血の通ったキャラクターになっていたからだ。同じ人形でも、テディベアのルドヴィックと、雪の中から拾ってきた人形や紙細工との間には明確な差がある。その差があっという間に無効になってしまう瞬間が、「雪の贈り物」や「ワニのいる庭」という作品の面白さなのだと思う。

 人形アニメには作家個人の趣味を前面に出したアート志向の作品が多いが、この映画はテディベアという世界的なキャラクターを使っているため、うるさい作家性に煩わされる心配がない。これもまた、この作品の親しみやすさを生み出している。

(原題:Four Seasons in the Life of LUDOVIC)

GW公開予定 ユーロスペース
配給:クレストインターナショナル
1998-2002年|48分|カナダ|カラー|スタンダード|ドルビー・サラウンド
関連ホームページ:
http://www.crest-inter.co.jp/

DVD:テディベアのルドヴィック
関連DVD:コ・ホードマン監督
関連DVD:冬の日

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