子猫をお願い

2004/03/19 映画美学校第2試写室
高校の仲良しグループの卒業後を描く韓国の青春映画。
携帯電話の使い方にセンスを感じる。by K. Hattori

 高校時代の女子生徒5人組の親友グループが、卒業後それぞれの道を歩み出していく中でさまざまな葛藤に出会うという、韓国製の女の子版『セント・エルモス・ファイアー』。学生時代は横並びの仲間同士だったのに、社会に出たことで少しずつ、しかし歴然としてくる立場の格差。そこから生まれる妬みや蔑視といった感情。それに気づいて、何とか仲間内の関係を調節しようとする者もいる。最後は登場人物のひとりがある事件に巻き込まれて……と、まぁこういうのはどうしたって『セント・エルモス・ファイアー』に似てしまうのですね。

 舞台は首都ソウルと、そこから少し離れた港町インチョン(仁川)。もともとインチョンの高校の同級生だった5人組は、卒業しても進学はせずにそれぞれ働き出す。グループは5人だが、物語の中心になるのは3人。残りの2人は中国系の双子に設定されていて、物語の中では特に大きな区別を付けられていない。つまりこの双子は匿名の存在で、グループの人数の水増し役というわけだ。

 というわけで、この映画の主人公は3人。ソウルの証券会社でバリバリ働くヘジュと、勤めていた工場からリストラされて現在無職のジヨン、そして家業の蒸し風呂を手伝っているテヒが中心になる。上昇志向の強いヘジュは、一流企業のハイテクオフィスで働く自分の姿に酔い、友人たちにもそれを鼻にかけるようなところがある。直接は言わないのだが、いちいちそれが態度に出てしまうのだ。仕事のないジヨンはそれが気になる。ふたりの関係は、少しずつよそよそしくなっていく。

 物語の展開は定番のセンをなぞっていて特に新鮮味はないのだが、劇中での携帯電話の使い方や見せ方、特に携帯メールを仲間内での重要なコミュニケーションツールとして使っているあたりは面白い。ここ数年の韓国映画を観ていて感じることだが、韓国の若者文化というのは今やほとんど日本と差がないのではないだろうか。

 ただし文化的に近ければ近いほど、風俗習慣の微妙な差異が逆に目に付いたりもする。この映画に描かれている、韓国社会の「女性差別」や「学歴主義」の凄まじさと根深さはどうか。高校を卒業した5人の少女のうち、誰ひとりとして短大や大学に進学しないのは、韓国では女性の社会的地位がまだまだ低い証拠だろう。ソウルの一流証券会社に勤めていても、高卒のヘジュは雑用係でしかないのだ。日本でいえば20年ぐらい前の感覚かな。女性社員でも大学を出ていればエリートコースらしいが、その数はまだまだ少ない。テヒの父親が、あまりにも露骨に息子ばかり可愛がるというのも、日本で同じことをやれば不自然すぎてちょっと異様だ。

 この映画はそうした韓国社会のあり方に、「それはちょっとおかしいよ!」と異議申し立てをしている。あまり大声ではないが、しかしきっぱりと、女の立場を主張している。監督・脚本はチョン・ジェウン。女性である。

(英題:Take Care of My Cat)

6月公開予定 ユーロスペース
配給:ポニーキャニオン、オフィス・エイト
2001年|1時間52分|韓国|カラー
関連ホームページ:http://www.ponycanyon.co.jp/
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