キル・ビルVol.2

2004/04/13 丸の内ピカデリー1
物語はいよいよクライマックス。泣かせます、笑わせます。
前作とがらりと雰囲気を変えた大満足の完結編。by K. Hattori

 クエンティン・タランティーノ監督のアクション大作『キル・ビル』の完結編。自分を殺そうとしたボスとかつての仲間たちを葬るため、復讐の旅を続ける凄腕の女殺し屋ブライド。殺しのリストに入っているのは、殺し屋4人とボスのビルだ。前作『Vol.1』ではそのうち殺し屋2名を倒し、ブライドはより強力な敵へと立ち向かう。

 映画の導入部はブライド本人による『Vol.1』のあらすじ説明。その後、物語の発端となった教会での惨殺シーンが再現されるのだが、今回は『Vol.1』では省略されていた事件直前の様子が描かれる。ビルとブライドの複雑な関係。ここで描かれているのは、愛し合いながらも別れた男と女の感情のすれ違いだ。これが終盤のクライマックスへと持ち越される、この映画の大きなテーマとなってくる。『キル・ビルVol.2』という邦題に、『ラブ・ストーリー』という副題風のキャッチコピーが付いているのはそのためだ。

 『Vol.1』のハチャメチャとも思えるアクションの連鎖に比べると、今回の『Vol.2』はずっと落ち着いたドラマ仕立てになっている。それはかつて隆盛を極めたビルの組織が、今はすっかり落ちぶれていることとも関係がありそうだ。ビルの組織で徹底的に元気がよかったのは、結局のところ前作のオーレン・イシイだけだった。残る3人の殺し屋は、主婦になって子育てをしたり、酒場の用心棒としてうらぶれたトレーラー暮らしをしたり、ボスの愛人になって小さい仕事をこなしていたりする。こうした組織の凋落も、結局はビルによるブライド襲撃以来のことなのだろう。ビルはかつての愛人ブライドを傷つけたことで、自らも傷ついているのだ。

 前作で顔の見えない悪の黒幕として描かれたビルは、今回ヒロインと対峙するもうひとりの主役として全編に顔を出している。デヴィッド・キャラダインの物静かな口調と精悍な表情は、この男の背負った業の深さを観客に印象づける。ブライドが自分の負った傷を「復讐」という行動に結びつけているのに対し、ビルは自分自身の傷を自分ひとりで抱え込んで離さない。ビルはそんな寂しい男なのだ。

 そんなウェットなドラマが展開しつつも、この映画はやはりアクションシーンになるとタガが外れたようにはじけまくる。ヒロインが山寺で修行するシーンの面白さと格好良さ。ダリル・ハンナ演じる女殺し屋との一騎打ちの壮絶さ。そして静から動、そして再び静寂へとダイナミックに組み立てられた宿敵ビルとの最後の対決。すべては周到に考え抜かれて、このタイミングでこれをやるしかないという場所に、全エピソードが配置されているのだ。

 エンドロールで『Vol.1』からの出演者がすべて紹介されるのが嬉しい。そしてエンドロールではやはり梶芽衣子の「怨み節」。しかし日本語の歌に字幕スーパーが入るのはなぜだ。観客に一緒に歌えというサインなのか?

(原題:Kill Bill: Vol. 2)

4月24日公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
2004年|2時間16分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SRD、SDDS
関連ホームページ:http://www.killbill.jp/
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