フランス映画界がハリウッドに対抗して作った大作サスペンス・スリラー、『クリムゾン・リバー』の正式な続編。前作はジャン=クリストフ・グランジェの小説を映画化していたが、今回はジャン・レノが演じるニーマンス警視というキャラクターだけを生かして、あとはオリジナルになっているようだ。前作では脚本・監督をマチュー・カソヴィッツが担当したが、今回は脚本がリュック・ベッソン、監督は『いつか、きっと』のオリヴィエ・ダアンに交代している。ニーマンスとコンビを組む若い刑事は、ヴァンサン・カッセルからブノワ・マジメルに交代。
フランス東北部ロレーヌ地方の修道院で、壁に塗り込まれた真新しい死体が発見される。それをきっかけに、次々と猟奇的な連続殺人事件が起きるようになる。殺されたのはフィリップ、トマ、マチューなど、十二使徒と同じ名前を持つ男たち。捜査担当となったニーマンス警視は、キリストと十二使徒を模したカルト信仰グループの存在に突き当たる。同じ頃、若い刑事レダの車が、イエス・キリストそっくりの格好をした男をはねる。男は銃で撃たれており、収容された病院でも黒衣の修道僧に殺されそうになる。別々の事件はやがてひとつに合流し、ニーマンスとレダは共同で事件の背景にある巨大な陰謀を探り始める。
『クリムゾン・リバー』も話がよくわからない映画だったが、今回の映画はそれ以上に話がよくわからない。レダが黒衣の修道僧を追跡したり、ニーマンスの車が銃撃されたり、各所に大がかりなアクションシーンがあって楽しめるのだが、個々の事件の背景にどんな陰謀があるのか、事件の黒幕たちが一体何を目的としているのかがさっぱりわからないのだ。これは映画を最後まで観てもわからない。いったいあの修道院は何だったのか。クリストファー・リー演じるドイツの大臣は、隠された秘宝にどんな意味を見いだしていたのか。十二使徒グループは、なぜ殺されなければならなかったのか。
ヨハネの黙示録、最後の審判、黙示録の騎士、七つの封印、キリスト教初期の異端モンタノス派、盗み出されたバチカンの秘宝など、オカルト映画にありがちなキーワードがちりばめられてはいる。でもそれが具体的にどんな意味があるのか、この映画の中にはまったく描かれていない。オカルト風のキーワードは、狂信者のたわ言でしかない。
欧米では聖書の登場人物と同じ名を持つ人が大勢いるのだが、聖書にも聖書風の名付けにも縁遠い日本人には、この映画の導入部のプロットがうまく飲み込めないのではないだろうか。字幕にも混乱があるようで、まるでチンプンカンプンなのだ。
映画随一の見どころは、身軽に屋根をよじ登ったりフェンスを飛び越えたりする運動神経抜群の修道僧たち。顔は最後まで見えないけれど、演じているのは『YAMAKASI/ヤマカシ』のメンバーだろうか。重力が消えたような跳躍は見事!
(原題:Les Rivieres pourpres 2 - Les anges de l'apocalypse)
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