APPLESEED

アップルシード

2004/05/18 有楽町スバル座
モーションキャプチャがアニメと馴染んでいない。
脚本のできもあまりよくないぞ。by K. Hattori

 士郎正宗の人気コミックを、『ピンポン』の曽利文彦プロデュースで映画化したSFアニメ。この映画の最大の特徴は、モーションキャプチャ技術を本格的に使った、初めての日本映画だという点だろう。モーションキャプチャの技術そのものは、『スター・ウォーズ』の新シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで使われているので、特別目新しいものではない。『APPLESEED/アップルシード』の目新しさは、動かす対象となるキャラクターが実写ではなく、目がくりくりと大きい、いかにも2次元のセルアニメっぽいデザインになっていることだ。同じアニメでも3次元のリアリズムを狙った『ファイナル・ファンタジー』とはまったく異なる世界だ。

 ただし僕は今回の映画にすごく違和感を感じた。身体の無駄な動きまですべて取り込んでしまうモーションキャプチャと、2次元風に抽象化されたアニメキャラのデザインがうまくマッチしていないのではないだろうか。予告編のような短時間のアクションシーンならそうでもないが、映画の中で登場人物たちが「芝居」を始めるとこの違和感は際立ってくる。人物のまばたき。表情の変化で現れる影の位置。生身の人間なら無意識に行っている重心の変化。これらがまったく誇張されず、リアルに映像化されている奇妙さ。

 これは「慣れ」の問題ではないと思う。あらかじめ抽象化されているアニメのキャラデザインと、動きが抽象化されることを拒否するモーションキャプチャという仕組みは、永久に馴染まないのではないだろうか。同じような方法でこの映画のパート2を作るのなら、取り込んだモーションキャプチャのデータを適当に間引いたり、アニメーターが動きを適度にアレンジするなどの中間作業が必要になると思う。「アニメもどき」を作る手段として今後モーションキャプチャは製作現場で多用される可能性があるけれど、この映画はモーションキャプチャがアニメーターの代用品にはならないことを証明していると思う。

 絵作りを離れて「物語」としてこの映画を観ても、かなり物足りないものになっていると思う。まず筋立てがわかりにくい。これは脚本が悪いんだと思う。映画の導入部にもう少し説明があるだけで、物語のボリューム感はずっと増したのではないだろうか。ヨハネの黙示録を気取って引用する前に、まずは物語の背景を説明してほしい。映画のあちこちに突然出てくる長台詞も、何が言いたいのかさっぱりわからない。台詞とドラマが噛み合っていないのだ。こうして肝心のドラマがお留守なままアクションシーンだけ盛り上げても、観ているこちらは気持ちが付いていかない。

 デュナンとブリアレオスの関係が物語の中心軸になるべき物語だと思うが、それが途中からデュナンとヒトミ、あるいはアテナ、もしくは両親の思い出などにずれていくので、物語のポイントがつかみにくい。

4月17日公開 有楽町スバル座他・全国洋画系
配給:東宝
2004年|1時間43分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.a-seed.jp/
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