ヒロイック・デュオ

英雄捜査線

2004/05/19 TCC試写室
催眠術を使った犯罪をというアイデアはイマイチだが、
アクションの切れ味は抜群。by K. Hattori

 警察署内の資料保管庫から、刑事が秘密資料を盗んで放火する事件が起きた。犯人の刑事はすぐに捕らえられたが、自分が資料を盗んだことも、盗んだ資料を誰に渡したかも覚えていなかった。彼は「催眠術にかけられた」と言い残して自殺する。事件の捜査担当となったリー刑事は、催眠術を利用した犯罪の権威である心理学者ライに捜査協力を依頼する。ライは殺人犯として刑務所に服役中だったが、事件の犯人が「マインドハンター」と呼ばれる自分の師匠であると指摘。犯人を捕らえるために自分が案内役になることを約束して、一時的に刑務所から出される。だがこれはライの仕掛けた巧妙な罠だった……。

 イーキン・チェンとレオン・ライ主演の刑事アクションドラマ。監督は『フー・アム・アイ Who am I?』や『ジェネックス・コップ』シリーズのベニー・チャン。催眠術を使った犯罪というアイデアは斬新なようで現実味がなく、しかもこの映画の場合は物語の辻褄が合わないような気もする。それはライの言うマインドハンターなる人物が、映画の途中でどこかに消えてしまうことだ。それともマインドハンターなど、最初から存在しなかったと言うことか? それなら最初に刑事に資料を盗み出させたのは誰?

 物語は男ふたりの火花を散らせた真剣勝負が描かれるのかと思いきや、リー刑事と恋人の関係や、ライと妻の関係などが途中から大きくクローズアップされて、最後はこうした男女関係のドラマで映画が締めくくられる。これによって、刑事と犯人の息詰まる駆け引きという本来のドラマが脇に追いやられてしまうのは、この手の映画に「男の世界」を求める人には物足りなかろう。もっともこれは、イーキン・チェンとレオン・ライという二枚目俳優を共演させて、女性ファンをがっぽり取り込もうという映画なのかもしれない。

 だが甘いラブストーリーなんてまっぴらだと思っている男性ファンも、この映画にはちゃんと満足できると思う。それはこの映画のアクションシーンが、きわめてレベルの高いものに仕上がっているからだ。マインドハンターを追う刑事たちが、狭いアパートの屋根で繰り広げる追跡劇はすごい迫力。撃たれた男が屋根から落下するシーンや、犯人や刑事が屋根から下に飛び降りるシーンなどは、リアルで激しい素晴らしいスタント。犯人扱いされたリー刑事が警官たちから逃げるシーンもすごい。ビルの屋根に即席の踏切板を作って隣のビルに飛び移ったり、ボロボロの非常梯子をビルとビルの間に渡してその上で格闘をしたり。高所恐怖症気味の人は、この映画を観て失禁寸前の恐怖を味わうことだろう。

 アクション監督はトン・ワイ。話が多少ぬるくても、アクションシーンさえ冴え渡っていれば映画はそこそこ面白くなるという見本のような映画。悪役を演じたフランシス・ンや、主人公の恋人役カリーナ・ラムなど共演者も粒揃い。一見の価値ありだ。

(原題:双雄 Heroic Duo)

6月公開予定 キネカ大森
配給:ハピネット・ピクチャーズ 宣伝・配給協力:フリーマン
2003年|1時間40分|香港|カラー|シネスコ
関連ホームページ:http://www.happinet-p.co.jp/
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