セイブ・ザ・ワールド

2004/05/20 TCC試写室
1979年のコメディ映画『あきれたあきれた大作戦』のリメイク。
クスリとも笑えない辛いコメディ。by K. Hattori

 CIAの秘密工作員であるスティーブの任務は大詰めを迎えていた。悪名高い武器商人ジャン=ピエールに原潜買付の話を持ちかけ、取引現場を一網打尽にするのが今回の作戦。だが交渉相手が取引の日に指定したのは、スティーブの一人息子マークの結婚式当日だった。仕事最優先のスティーブはこれまでもずっと家族を後回しにし続けてきたのだが、今度ばかりはそういうわけにもいかない。ヨーロッパから危機一髪の生還をはたしたスティーブは、息子の結婚相手の両親と初めての対面。だが武器商人のルートに深く食い込んでいるスティーブは、今やFBIからも追われる立場だ。ジェリーは娘の結婚相手の父親が犯罪者だと思いこみ、結婚を破談にすると騒ぎ始めるのだが……。

 1979年に製作されたピーター・フォークとアラン・アーキン主演のコメディ映画『あきれたあきれた大作戦』を、マイケル・ダグラスとアルバート・ブルックス主演で再映画化したもの。僕はオリジナル版を未見だが、再映画化しようとするくらいだから、たぶん面白い映画だったに違いない。だが今回の再映画化版は、まったくの駄作と言うしかない。マイケル・ダグラスというビッグネームが出演しながら、公開規模の小ささが気になってはいたのだけれど、なるほどなぁ……。監督は『ザ・クラフト』のアンドリュー・フレミング。

 そもそもスティーブが取りかかっている事件の概要が、映画を観ていてもさっぱりわからない。犯罪組織の実態を探るサスペンス映画ではないのだから、こんなものは「ありがちな設定」を使って、最初にあっさりと説明してしまえばいいではないか。スティーブのバックグラウンドを紹介するこのエピソードは、「子供の結婚で双方の父親たちがドタバタ」という本題のエピソードを盛り込む器に過ぎない。雑多なギャグを次々に繰り出すこの手の映画では、器はなるべくシンプルで大振りなものの方がいいのではないだろうか。この映画ではいきなり「盗まれた原子力潜水艦!」というとんでもない大技を出すのだが、用意された器はその潜水艦だけで一杯になってしまい、他のエピソードを乗せる余地が残っていなかった。

 性格のまったく違うふたりの人間が、最初の反発を乗り越えて友情を育むというバディムービーだが、大胆だが大ざっぱなところがあるスティーブと、小心で神経質なジェリーのチグハグコンビがまったく面白くない。これはやっぱり脚本の問題だろう。これだけの役者を使っていながらもったいない。キャンディス・バーゲン演じるスティーブの妻も、ただの変人になっているのはひどい。スティーブのアシスタント役でロビン・タニーがいい味を出しているのだが、彼女は最初から最後までスティーブの補佐と尻ぬぐい役に徹した方が面白かったと思う。デヴィッド・スーシェ演じるジャン=ピエールには、最後の最後にもうひとつ気の利いたオチがほしかった。

(原題:The In-Laws)

7月公開予定 有楽町スバル座
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
2003年|1時間35分|アメリカ|カラー|サイズ|DTS、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.savetheworld-movie.com/
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