CODE 46

2004/05/26 新宿明治安田ホール
マイケル・ウィンターボトム監督が始めて挑んだSF映画。
話は暗いし、印象もひどく地味。by K. Hattori

 マイケル・ウィンターボトム監督が始めて挑んだSF映画。主演は『ギター弾きの恋』や『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたことのあるサマンサ・モートンと、『ミスティック・リバー』でアカデミー助演男優賞を受賞したティム・ロビンス。SFと言っても宇宙船やエイリアンが出てくるわけではない。ここで描かれているのは、クローン人間がごく当たり前に生活する中で、同じ遺伝子を持つ「血縁者」同士の結婚を禁じられた近未来社会だ。環境破壊で地球は砂漠化が進行し、人工的に環境が整えられた都市部に住むエリートたちと、砂漠化した外の世界に住む見捨てられた人々とに人類は二分されている。世界各地に点在する都市と都市の間を移動するには、通行証とパスポートを兼ねたパペルという許可証が必要になっている。

 パペル製造を一手に引き受けるスフィンクス社の上海工場で、従業員の誰かが偽造パペル作っているという情報が入る。調査のため現地にやってきたのは、調査員のウィリアム・ゲルド。彼は従業員に面接して即座に犯人がマリア・ゴンザレスという社員であることを突き止めるが、そのことを会社には報告しなかった。ウィリアムはマリアに近づき、彼女が偽造パペルを作っては友人たちに配っている様子を目撃さえする。だが彼はそれをどこにも届けず、互いが惹かれ合うままその日はベッドを共にするのだった……。

 現実の風景を未来の風景に見立てるという手法や、生殖医療技術の発達が物語のモチーフになっていること、男女の恋愛がドラマの中心になっていることなど、アンドリュー・ニコル監督の『ガタカ』との共通点を数多く持った映画だ。どちらも未来を、遺伝子によって人間を選別する階級社会ととらえている。だが『ガタカ』はそんな管理をはねのけて、主人公が自分の夢を実現する物語だった。結末はハッピーエンド。だが『CODE 46』はもっと暗い。主人公たちは管理社会の網にとらえられて、決して逃げられないのだ。そして、巧妙に網にとらえられたものは、自分が網にとらえられているという事実にすら気づかない。誰も気づかないまま、自由だけが奪い取られている未来……。

 話のアイデアはともかく、この映画はかなり暗い。最初から最後まで、ずっと暗いのだ。ディストピアSFの場合、最初はそこが表向きユートピアのように描かれているのが普通だと思うけれど、この映画は最初から雰囲気が息苦しい。これがイギリス映画というものか。それともウィンターボトムの個性なのか。ハリウッド映画なら、最後の逃避行をもっと劇的に描くとか、一瞬ハッピーエンドに思えるような結末を作って、そこからドンデン返しにするとか、何かドラマチックに見せる工夫をするだろうになぁ。こういう映画を観ると、紋切り型でもサービス精神旺盛なハリウッド流の映画話法が恋しくなる。

(原題:CODE 46)

夏公開予定 シネセゾン渋谷、シネスイッチ銀座
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガGシネマ海、ミラクルヴォイス
2003年|1時間33分|イギリス|カラー|シネマスコープ|DORBY SR、DOLBY DIGITAL
関連ホームページ:http://www.code46.net/
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