ロード88

[出会い路、四国へ]

2004/07/02 スペースFS汐留
白血病の少女がスケボー使って四国霊場八十八ヶ所巡り。
普通によくできた映画だと思う。by K. Hattori

 16歳の少女・牧村明日香は、四国八十八ヶ所の霊場をスケボーで巡るお遍路の旅に出る。明日香は骨髄性白血病で、骨髄移植なしでは遠からず命を落とす運命。だが彼女に適合する骨髄は容易にみつからないまま時間が過ぎている。少しでも体力があるうちに、自分のやりたいことをやっておきたい! そんな彼女の旅に偶然同道することになるのが、落ち目の中年お笑い芸人・佐藤勇太と、ワケありの中年男・伴野一郎だった。

 女性ポップスグループBOYSTYLEの村川絵梨が初主演する、青春ロードムービー。監督は中村幻児。共演に小倉久寛や長谷川初範など。テレビ番組のディレクター役に津田寛治、そのアシスタント役に須藤理彩といった配役。物語は須藤理彩演じる新米ディレクターの回想談という形式になっているが、これにはあまり意味がないようにも思う。ハワイのホノルル・マラソンのシーンで映画全体をサンドイッチにしたいという構成上の意図はわかるのだが、四国お遍路の話とホノルル・マラソンが直接にはつながらないので、この語り口にはしっくりしたものが感じられなかった。普通に時系列でドラマをつないで、最後に「後日談」とした方がシンプルでよかったんじゃないだろうか。

 こうして最初に不満を書いてしまうのは、それ以外の点について僕がとても満足しているからだ。この映画では四国お遍路の旅を通じて、人間同士の不思議なつながりを描いている。映画の最初の方で説明されることだが、四国霊場八十八ヶ所を巡るお遍路さんは、その旅の中で弘法大師に出会えるのだという。つまりそれは、その人の人生を変える重要な人との出会いという意味だろう。(なにやらヨーロッパの聖人伝に出てくる、子どもや乞食の姿になったキリストとの出会いを連想させる話だ。)映画の中ではヒロインの明日香が様々な人に出会う。そしてその出会いを通して、彼女自身の人生が大きく変わる。同じように、明日香と出会った人たちも、その出会いを通して人生を変えていく。霊場巡りそのものが「神秘」なのではない。そこで出会う人間同士の交流こそが「神秘」なのだ。

 四国でオールロケーションしたという風景が、この映画の大きな財産になっている。また現在のお遍路の旅の実態を、細かく描写しているのも興味深い。四国にお遍路というものがあることを知っている人でも、その旅が具体的にどのようなものなのかを知ることは少ないと思う。僕は「白装束の巡礼者が道をとぼとぼ」というお遍路のイメージがあったのだが、この映画のヒロインはスケボーで旅をしているし、芸人の勇太はママチャリ、スポーツタイプの自転車もあれば、バイクで霊場巡りをする者もいる。さらにはタクシーを使ったり、バスをチャーターしての集団お遍路もあるなど、スタイルはいろいろなのだ。

 芸能プロのアミューズが製作に加わっており、脇の配役も風景に負けない豪華さだ。

9月17日 松山映画祭2004オープニング作品
9月19日 四国先行ロードショー
秋公開予定 全国順次ロードショー
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2004年|1時間50分|日本|カラー|ヴィスタサイズ|ドルビーステレオ
関連ホームページ:http://www.road88.jp/
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