SHORT 5

2004/07/13 UPLINK X
カンヌ映画祭で上映された短編5本のオムニバス上映。
1本目の『ファスト・フィルム』は楽しい。by K. Hattori

 ここ何年かのカンヌ映画祭に出品された短編映画の中から、評価の高い5作品を集めたてのオムニバス上映。もっとも短い映画で6分、長い映画で25分、全部合わせて1時間8分という上映時間になっている。以下上映順に各作品の内容と簡単な印象を書いておく。

 『ファスト・フィルム』(FAST FILM)は古今東西の様々な映画から場面を抜き出し、切ってつないで作り上げられた動くコラージュ。引用されている作品は300本ぐらいあるそうで、中には誰もが知る有名映画もたっぷり。『ゴジラ』もあれば、『雨に唄えば』も『レイダース』もある。これはコンピュータなしには作れなかった映画だろう。特にストーリーというのはないが、同じように引用で埋め尽くされたゴダールの『映画史』より100倍は楽しい。年季の入った映画ファンほど面白く感じる映画だと思う。「あの映画をこう使うのか!」という驚きがある。今回の5本の中では1番のお気に入り。

 『ドゥ・ユー・ハブ・ザ・シャイン?』(Do You Have the Shine?)は映画『シャイニング』を思わせる設定のゲームに、観客を強引に引き込んでいく作品。三輪車でホテルの廊下を走り回るプレイヤーは、双子の少女の幽霊に出会わないようにしなければならない……。出るとわかっていても、それがじりじりと先延ばしされているのがスリルを生む。最後は「出た〜!」でおしまい。でもやっぱりドキリとした。でもこれ、『シャイニング』を観ていない人でも面白いのかな。その辺はちょっと疑問も。

 『フィールド』(field)は田園風景の中で遊ぶ3人の少年たちが、少しずつその凶暴性や残虐性をかいま見せるというドラマ。少年たちの悪ふざけがじつにリアル。最後に明らかにされる事件を、誰が起こしたのかよくわからないというのが恐い。誰もがこの事件を起こしうるということか。

 『プレイ・ウィズ・ミー』(Play with me)ものどかな田園風景が背景になっている。用水路をボートに引かれながらまどろむ少女が観たものは、つかの間の幻か、それとも現実か。これも最後に何が、なぜ起きたのかさっぱりわからない。しかしその場面に至るまでの間に、観るものを不安にさせるような細かな描写がちょろちょろ入れ込んである。

 『ジャンヌダルク・オン・ザ・ナイト・バス』(Janne de Arc on the Night Bus)は病院で行われる救急出動訓練の患者役に雇われた者たちが、突然歌い始めるというミュージカルかオペラのような作品。これも話はまったくよくわからないけれど、まるでドキュメンタリーのような写実的映像に、登場人物が突如として歌うという非日常が重なり合うことで、面白い効果が生まれている。でもこのインパクトは、最初の数分だけなんだけどね。僕自身はこうしたオペラ風の歌い方があまり好きではないので、これにはあまり乗れなかった。

7月31日公開予定 UPLINK X
配給:アップリンク
2003年|1時間8分|カラー
関連ホームページ:http://www.uplink.co.jp/
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