スクール・ウォーズ

HERO

2004/08/05 松竹試写室
かつてテレビドラマ化された実話をもとにした学園ドラマ。
「感動実話」のストレートな力強さ。by K. Hattori

 今から30年前。校内暴力が吹き荒れる京都の工業高校に赴任した体育教師が、不良の巣窟だったラグビー部を立て直して、数年で強豪チームへと育て上げた実話を映画化したもの。この物語は84年に「スクール★ウォーズ/泣き虫先生の7年戦争」のタイトルでテレビドラマ化され、今回の映画はその劇場版リメイクというわけだ。テレビ版は馬場信浩のノンフィクション「落ちこぼれ軍団の奇跡」を原作にしていたが、今回の映画はモデルとなったラグビー部の監督、山口良治の著書が原作とのこと。映画の企画のもとになったのは、むしろNHKの人気番組「プロジェクトX」で取り上げられた同校の物語にも思える。しかし映画のタイトルは『スクール・ウォーズ』で、主題歌は大黒摩季がカバーした「ヒーロー」。映画がテレビ版をなぞっていることは一目瞭然なのだ。

 ラグビーの全日本代表選手から実業団チームの監督が内定していた山上修治は、京都の伏見第一工業高校の校長に口説かれて教師としての第一歩を踏み出した。だがそこは、校内暴力の嵐が吹き荒れる地最底辺校であり、山上が監督・コーチを任されたラグビー部こそ、校内の不良たちが集まる悪の巣窟だった。自分の言葉にまったく耳を傾けない生徒たちを前にして、元全日本代表選手としてのプライドが木っ端微塵に打ち砕かれる山上。だが妻の励ましの言葉もあり、彼は校門で生徒ひとりひとりに声を掛けることから学校改革を始めようとする。最初はそんな彼を冷ややかに見ていた生徒や他の教師だったが、やがて彼の行動に賛同する若い教師も現れ、生徒たちも少しずつ心を開いていく。

 主人公の山上を演じるのは、「水戸黄門」や「新選組!」などで活躍している照英。元槍投げ選手だったという体格が、元ラガーマンの熱血教師という人物像に説得力を与えている。彼が生徒と一緒にグラウンドを走るシーンなど、その走り姿がじつにサマになっているのだ。役者として繊細な感情表現や技巧的演技に長けているわけではないはずだが、今回は大ざっぱで不器用な芝居が逆に効果を生み出している。笑う時は笑い、怒る時は怒り、泣く時は涙をポロポロこぼして大泣きする。そのわかりやすい感情表現こそが、山上という人物像を魅力的なものにしているのだ。

 モデルになった山口良治は「泣き虫先生」とあだ名されるくらいよく泣いたようだが、この映画でも照英の泣きっぷりが素晴らしくいい。初めての練習試合を生徒にすっぽかされた夜、彼がビールのコップを握りしめたまま悔し泣きする場面。校門での声掛けに同僚教師が加わった時、肩を抱き合いながら感極まるシーン。そして名門チームとの試合でボロ負けした生徒たちを前に、「悔しかったやろ」と泣きじゃくるシーン。謹慎処分を受けた彼を生徒たちが訪ねて来たことに感激する場面。どれもこれも、照英のくしゃくしゃになった泣き顔が名場面を作り出しているのだ。

9月18日公開予定 シネ・リーブル池袋他・全国洋画系
配給・宣伝:松竹 宣伝:スキップ
2004年|1時間58分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.schoolwars.jp/
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