NIN×NIN 忍者ハットリくん

THE MOVIE

2004/09/08 錦糸町シネマ8楽天地(シネマ8)
子供の世界をいきいきと描いた原作の魅力は皆無の実写版。
これはそもそも脚本がダメなのだ。by K. Hattori

 藤子不二雄A原作の人気マンガ「忍者ハットリくん」を、SMAPの香取慎吾主演で映画化した作品。ただしこれはマンガの実写化というより、マンガを原作としたアニメの実写化なのだろう。エンディングではアニメ版のテーマ曲をラップ調にカバーしたものが流れる。監督は『GTO』や『世にも奇妙な物語』の鈴木雅之。脚本は元・お笑い集団ジョビジョバのリーダー、マギーが担当している。

 もともと子供向けの映画なのだし、大のオトナがこうした映画についてあれこれ批判したり文句を言うのも虚しいことかもしれないが、それにしてもこの映画はひどかった。香取慎吾を主演にしたことで避けられないこととはいえ、ハットリくんが小学生の健一を自らの主(あるじ)にするという設定はどう考えても不思議。ライバルのケムマキもすっかりオトナになっていて、最後は黒影とかいう甲賀忍術の達人まで全員がいい年をしたオトナなのだ。オトナ同士が勝手に忍術合戦をやって、それに子供が巻き込まれる不愉快な話だ。健一が秘かに思いを寄せる年上の女性も、演じているのが田中麗奈だからすっかりオトナなのだ。ここまで来ると、ちょっとグロテスクだぞ。

 そもそも子供の忍者ごっこから始まった荒唐無稽なおとぎ話が「忍者ハットリくん」なのに、健一くんは両親から見捨てられ、クラスに友だちもいない孤独な少年で、しかもいじめられっ子。甲賀流忍術の使い手たちが次々に何者かに襲われるというミステリーに、最後は誘拐事件があり、クライマックスは本気で命をかけた壮絶なチャンバラがあり、最後に己の非を悟った黒影は凄惨な爆死を選ぶ。はっきり言って、話を広げすぎだ。「忍者ハットリくん」はご近所を舞台にした小さな話の中に、少年姿の忍術の達人が入り込むという非日常のおとぎ話ではないのか。そこにイジメなんていらないし、警察がからむような犯罪も不要だ。こうして暗くリアルな現実を移したエピソードを映画に紛れ込ませることで、おとぎ話の快活さは湿り気を帯びてしまった。

 そもそも企画の段階でハットリくんを香取慎吾が演じることが決定済みだとしても、子供の世界の中だけで話を展開させる工夫が考えられてもよかったはずだ。健一と同世代の子供たちの交流が描けていないという点だけを取っても、この映画は「児童映画」として完全な欠陥品。児童映画でないとすれば、この映画は一体誰をターゲットにした映画なのか。子供相手の商売でこそ、商売人の倫理が問われるものはない。相手が子供だからといって、粗悪品を押しつけるのはやめた方がいい。

 そもそもこれは脚本家と監督の人選が悪かった。脚本のマギーは自らの脚本・監督で『ショコキ!』を撮っているけれど、それも面白くはなかったぞ。鈴木監督も『GTO』はひどかったしなぁ……。これでせめてアクションシーンが面白ければ、もうちょっと観られた映画になったかもしれないんだけど。

8月28日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
2004年|1時間40分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.nin-nin.com/
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