さよなら、さよならハリウッド

2005/2/8 メディアボックス試写室
ウディ・アレンの軽快すぎるコメディ映画。これは面白い!
深刻さとまるで無縁なところがいい。by K. Hattori

 日本で3年ぶりに公開されるウディ・アレンの新作映画だが、何のことはない、映画は3年前に完成したものの、今まで日本公開が手控えられていただけなのだ。面白い映画だと思うのだが、今回の映画はアレン以外のキャスティングがかなり地味目。なにしろ相手役のティア・レオーニがちょっと知られるぐらいで、あとは誰が誰だかわかりゃしない。中身はいつものアレン節で思わずクスクスゲラゲラ笑ってしまう場面が満載なのだが、いかんせんこれは日本市場にアピールしないと思われたのかな……。

 ウディ・アレン演じるヴァル・ワックスマンは、アカデミー賞を撮ったこともある名監督。だがここ数年は不振が続いて作品のヒットにも恵まれず、気乗りのしないCM監督などでかろうじて生活する日々だ。そんな彼のもとに、ハリウッドから大作のオファーが舞い込む。だがプロデューサーのエリーはヴァルの元妻。その婚約者でもある製作会社の重役ハルは、ヴァルからエリーを奪った張本人だ。別れてから何年も経っているとはいえ、ヴァルの心境は穏やかではいられない。それでもこの仕事を引き受け、いよいよ明日はクランクインという日になって、ヴァルの体調に重大なトラブルが起きる。なんとヴァルの目が突然見えなくなってしまったのだ! このことが外部に漏れればヴァルの映画作家生命は終わると考えたエージェントは、目の見えないヴァルにそのまま監督を続けさせるのだが、はたして目が見えなくても映画監督業は勤まるものなのか?

 映画ファンなら好きにならずにいられないバックスクリーンものだが、撮影現場そのものより、映画監督、プロデューサー、エージェントの確執が主要モチーフになっているのがユニーク。映画がどのように企画され、どのように監督に依頼が舞い込み、プロデューサーというのが実際にどんな仕事をしている人たちなのかが、この映画を観ればよくわかると思う。まあしかし、そんなことはこの映画の中心課題ではないけれど……。

 映画は全体で3つぐらいのパートに別れる。最初は「映画の仕事がしたい!」という気持ちと、「自分を裏切って別の男に走ったエリーが許せない!」という感情の間で揺れ動く主人公ヴァルの心情をつづる葛藤のドラマ。レストランでエリーと打ち合わせをするヴァルが、ふたつの感情の両端を猛スピードで行ったり来たりする様子は抱腹絶倒。これはもう、ウディ・アレンの個人芸の素晴らしさに舌を巻いてしまう。中間部は目の見えなくなったヴァルが、いかにして現場でそれらしく振舞うかというドタバタコメディ。ありとあらゆる取り違えギャグが盛り込まれ、ここもついクスクス笑い出してしまう。最後は映画が完成した後の後日談。映画のあまりにも悲惨なできにがっくりと肩を落とすヴァルとエリーが、なぜかハッピーエンドを迎えるあわただしい結末までを快調に描いていく。う〜ん、上手い!

(原題:Hollywood Ending)

陽春公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:日活
2002年|1時間53分|アメリカ|カラー|ビスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.nikkatsu.com/movie/
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